Pnika 隅屋輝佳さん:投票以外の「法制度の変え方、作り方」

PAイベント

2019年4月23日(火)19:00〜、PA(パブリックアフェアーズ)勉強会を新橋コワーキングスペース Basis Pointにて開催しました。マカイラ主催で開催されてきたこの勉強会も今回で5回目を迎え、官僚、ロビー関係者をはじめ、民間事業者、弁護士、コンサルなどなど、パブリックアフェアーズにさまざまなカタチで携わる、40名の方々にお集まりいただきましたので、そのイベント要旨をお送りいたします。

今回のテーマは「マルチステークホルダーを巻き込んだオープンな法・制度設計プロセス」

一般社団法人Pnika(プニカ)代表の隅屋輝佳さんが、現在リリース準備中(6月上旬予定)の法・制度設計のオープンイノベーションプラットフォームの構想と、官民連携の規制改革プラットフォームの台湾での先進事例について、講演しました。

まず、法・制度設計のオープンイノベーションプラットフォームの構想について

出発点となる課題意識としては、若者を中心に政治的有効感覚が失われていること、イノベーションサイクルの加速度に、法・制度のアップデートが追いついていないことの2点。Society 5.0 (ポスト情報社会)において、オープンシステムを前提とした開発プロセスが、システムの世界で標準化されてきているなか、政策立案プロセスにも、変化が必要なのではないか。

オープンシステムに現在の制度設計システムを当てはめてみると、通常運用のなかから、障害の予兆を検知したり、環境が変化しているという課題をインプットする能力が弱まっていること、合意形成においてステークホルダーの合意の場がない・参加者の偏りがあること、オープンガバメントは道半ばで情報ギャップが存在することが説明責任を脅かしていることなどと課題の背景が整理できる。

こういった課題意識は、世界的な潮流でもあり、イギリスのシンクタンクは、予測不可能な現代においては、市民も含めたマルチステークホルダーによる法・制度の設計(Anticipatory Regulation)へと変容する必然性があると指摘している。

また、新しいテクノロジーを用いて政策立案における市民参加を促し、法律および政策決定サイクルの各段階で活用される情報、判断および専門知識をより広範囲に集め、法律および政策の質と正当性を向上させるCROWDLAWと呼ばれる事例は、世界中ですでに100以上見られる。

現在リリースを準備している、Pnikaプラットフォームは、法・制度設計領域における多様な人材のコラボレーションの場にする。現場のイノベーターや市民からの課題のインプットを受けて、ステークホルダーを巻き込んで課題の整理を行い、制度化への活動をコーディネイト、サポート、一連の動きをメディアで発信していく。

イノベーターのストーリーとして「法制度の変え方、作り方」のケーススタディを蓄積し、投票以外の制度設計への参加の機会を提供することで民主主義のアップデートに寄与し、制度設計側には良質な課題の種を探す場として活用してもらいたいと考えている。

2014年のひまわり革命をきっかけに、官民協働が進んでいる。g0v(ガブゼロ)というシビックテックの団体が構築したvTawan(ヴイタイワン)という合意形成プラットフォームでは、2015年から2年間で、26件の規制が話し合われ、その8割が何らかの政府の行動につながった。

vTaiwanには提案、意見収集、反映、制度化という4つのステージがあり、各ステージで必要なオンラインツールが活用され、データやアウトプットは公開され透明性を担保している。毎週水曜日にはハッカソンが開催され、デジタル担当大臣のオードリー・タンさんも同席し、誰もが参加することができる。

アクターとしては、g0vのほか、POネットワーク(ピーオーネットワーク、各省庁の中で市民連携を行う役割を持った行政官のネットワークで、省庁横断で共創MTGが開かれ問題解決に取り組む)、PDIS(ピディス、オードリーさんのオフィスで、官民の対話を促進するためg0vやPOネットワークをサポートしている)があり、ゆるやかなコミュニティで人材交流がさかん。

国側には、Join(ジョイン)というプラットフォームもあり、課題設定の請願から制度へのコメント、政策実行のモニタリングという一連のサイクルを確認できる。5,000件以上の請願については、官側からのなにかしらの回答がされる。

台湾から学んだのは、まず、政府側が市民を信頼し、結論ありきでない議論のプロセスを受け入れるという点。反対者を含め、可能な限りステークホルダーを特定し問題定義の最初の段階から参加を促し、透明性を担保するために、議事録に全て残し公開する。

政策ありきでなく、サービス顧客としての市民ニーズが中心であること。こういった思想やコミュニティがあってこそプラットフォームは成立するのであり、テクノロジーはそれをサポートしているにすぎない。

以上のプレゼンテーションを受けて、活発な意見交換がなされました。

与党事前審査制や議連など、非公式の意思決定プロセスが実質的な決定権を持つ問題の複雑性、参加型プロセスを日本に導入する際の難しさ、持続可能な活動にしていくためのインセンティブ設計など話は多岐に渡りましたが、なかでも盛り上がったのが、特定の利益団体を基軸とするロビイングと地域や社会課題との結束点をどう見出すのかは、常にPAという業務につきまとう難しい問題であるとのコメントから始まった一連の議論。

法律の専門家:実際のところはともかく、best for clientと社会正義を両立させるのが、かっこいい弁護士だというのがある。弁護士とクライアントの関係性に近いのではと思う。

モデレーターの藤井さん(マカイラ代表):既存ロビイングとPnikaが構想するようなプラットフォームの関係性はどうか。オープンな法設計プラットフォームであるPnikaが成立すると、個別イシューについてクローズドな調整や働きかけを行う既存ロビイングは不要になる。が、完全オープンはなかなか難しいので、このオープンとクローズが補完関係にあるのが、面白い。

Pnikaはオープンとはいっても、あるイシューについて、最終的な結論がどうなるのか分からないまま価値ニュートラルで合意形成を行うプラットフォームではなく、特定の結論や価値を目指したキャンペーンのためのプラットフォームだと思っていますが、ずれている?

隅屋さん:ずれていないが、特定の価値は、私たちのプラットフォームのプロセスを経ることで、例えば他のステークホルダーのペインにきづいたときなど変容する可能性を許容できるかどうか。許容できないとなると一緒にはできないと思う。

参加者:それはロビイングも同じ。クライアントのいうことをきくだけのロビーはやるべきではないし、成立しえない。社会状況を踏まえたクライアントとの対話の中で、必ず、変容する。

参加者:海外ではいろいろな立場の特定の利益団体が存在しますが、『共通の敵は現状維持』というところで、議論が展開される。日本の課題は、建設的な議論が行われていないこと。あるべき議論をおこす機能を、プラットフォームとして期待したい。

80分ほどの意見交換はあっという間に終了し、お開きとなりました。

PA勉強会では今後も、こういったパブリックアフェアーズの専門家、関係者が集まりって、お互いの知見を持ち寄って、その名前の通り勉強する場として開催予定です。

 

制作:PublicAffairsJP編集部

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