公共戦略のWhy・What・How 企業が市民セクターに期待すること【講演レポート 後編】

PAイベント

2021年1月28日(木)、市民アドボカシー連盟が主催する『草の根ロビイング勉強会』にて、「公共戦略のWhy・What・Howと、企業が市民セクターに期待すること」をテーマにマカイラ株式会社の高橋朗がパブリックアフェアーズについてお話しました。当日の講演内容の一部をご紹介いたします。

*【講演レポート 前編】はこちら。

講師:高橋 朗(Akira Takahashi)

マカイラ株式会社 代表取締役 COO。日本銀行でエコノミスト、中小工具メーカーの企業再生、 楽天でグループ経営企画やネットメディア系の事業開発などを経て 、医療×ITのスタートップ企業Welbyに参画し、 同社のIPOに貢献。この間、 プロボノとしてNPO向けの寄付プラットフォームを立ち上げなど 非営利領域の活動のほか、グロービス・マネジメント・ スクールで思考系の講師として教壇に立つ。マカイラでは、 幅広い業界・ 領域に関する知見を活かしたコンサルティングを提供するとともに 、創業者の藤井宏一郎と共同の代表取締役COOに就任。

後編「企業が市民セクターに期待することー大きなチャンスの時代」

高橋 朗(以下、高橋):前半の「パブリックアフェアーズとは何か? どう進めるのか?」というお話に続いて、後半では、こうしたPAの考え方を活かして、改めて、草の根のアドボカシー活動を行っている方やNPO、スタートアップ企業などが、大企業とどのように連携していくといいか、私が見ている時代背景も含めてお話しさせていただきます。

大きなポイントは、変革の主導者であり、担い手である草の根アドボカシーやってらっしゃる方々やNPO、スタートアップ企業にとって、今は大きなチャンスだろう、という点です。なぜそう考えているか、背景を二つお話したいと思います。

背景:転換期の日本とTech&Socialイノベーションへの期待

高橋:一つ目の背景は、今、転換期の日本において、テクノロジー・イノベーションとソーシャル・イノベーションの両方の必要が増していることです。

まず、日本経済には、少子高齢化や地方の衰退など構造的に従来の延長線上では解決できない問題がどんどん増えていて、その解決策となり得る新しいサービスや技術、いわば、テクノロジー・イノベーションが求められています。

また、貧富の格差拡大、環境問題、ジェンダー問題などダイバーシティに関することなど、いわゆるSDGsで取り上げられるような社会課題について、人々の解決志向、すなわちソーシャル・イノベーションを求める意識が、まだマジョリティではないにせよ、徐々に高まりつつあるように感じています。

これら、「テクノロジー&ソーシャル・イノベーション」によって、解き難い日本の様々な課題を解決しようと、今の日本は変わってきているんじゃないかとみています。これが背景その一です。

背景:”カネ余り”⇨求められているのは投資先と投資する理由

高橋:もう一つの背景が、世界的な「カネ余り」です。日銀を含めて各国の中央銀行が過去に例を見ない金融緩和を続けてきた結果、マクロではカネが余りまくっています。

コロナ禍で実体経済がダメージを受けているにもかかわらず世界的に株高が続いているのも、この影響とみていいでしょう。届くべきところにおカネが届いてないという問題もありますが、こうした行き場のない投資家たちのおカネが今、「投資先」と「投資する理由」を求めている状況なのだと思います。

「投資する理由」として求められているのが、ソーシャル・イノベーション、もしくはソーシャル・インパクトをもたらすストーリーとロジックであり、「投資先」が変革を担うスタートアップ企業や、NPOを含む市民セクターです。

SDGsの認知が広がるなかで、とくに欧米の投資家にとってはESG投資が当たり前の話になり、さらに一歩進んで、これからはインパクト投資の観点で社会的インパクトをきちんと評価できないと駄目だよねという流れがかなり強まっています。

そこで、「〇〇という社会課題にこういう解決策で取り組み、この程度の社会的インパクト創出を目指します」というストーリーとロジックを、投資家サイドが求めていて、そのプレッシャーを受けて、ベンチャーキャピタルや大企業、フィランソロフィー系の財団なども、「投資する理由=社会的インパクト創出ストーリーとロジック」を持つスタートアップ企業やNPOを捜している、というのが、今のおカネを巡る世界の状況なんじゃないかなあと思います。

大企業がNPOやStartup企業との連携に期待するもの

高橋:だからこそ、特にNPOなどの非営利セクターの方々は、皆さんが持っている「社会変革に向けた種」を、「説得力のあるロジックとストーリー」に進化させるべきです。

皆さんが目指す変革と相性の良いWhy-What-Howを持っている大企業はきっとあるはずです。そういう企業のWhy-What-Howを理解した上で、「私たちの活動は、あなた達=大企業のWhy-What-Howのここにマッチしている、だから私たちを支援するといい」といった形で提案していくことがやりやすくなってますし、きっとできることが多いんじゃないかなと思います。

たとえば、企業がやっている事業はこういう社会的な正当性と意義があるんだよ、それを非営利でやっている皆さんと組むことで、その意義が担保されます、という連携の提案があり得るかもしれません。あるいは、企業が持っている「Why」のためには、実はこういう「What」を実現するといい、とか、こういうやり方があるよ、など、企業自身が気がついていない知見やアイデアを提供して連携することもできるかもしれません。

こういう観点で、連携相手になりうる企業のWhy-What-Howを考えていくこと、そして自分たちのWhy-What-Howを改めて考え直してみることが重要なんじゃないかなと思います。

結びに、皆さんのWhyとWhatを、Howの前に改めて深く考えてみることをおすすめします。何の目的で何をやろうとして、何を目標にその活動をしようとしているかを考えてみてください。

Whyを改めて考え直してみると、自分たちがやろうとしてきたことよりも、大きな課題に取り組むべきだった、ということに気がつくかもしれません。そして、より大きく広い課題に取り組むためには、新しくこういう仲間を集めないといけない、そして新しい仲間を得ることができたことで実際の活動の中でより大きな社会的インパクトを作れるようになるかもしれません。

こうした、いわば「Social Impact 拡大再生産サイクル」を、マカイラとしてお手伝いできれば嬉しいです。

質疑応答

質問者1:合意形成を図るステップについて2つ質問です。ひとつめは、人脈などないなかで、最初の1歩目をどう踏みだしたらいいのでしょう?

もうひとつは、反対者を取り込むコツがあれば教えてください。なかには、どんなエビデンスを出しても聞き入れずに反対してしまうような人たちもいると思うんですけど、そういったケースにおいては、どういった対処をされるんでしょうか?

高橋:まず、実行段階の「最初の1歩」としては、そもそもこのイシューに関係するステークホルダーってどういう人たちがいるのかっていうことをまず調べるところから始まると思います。

ただ、調べるといってもそんな情報がネットに載ってるわけでもないので、やっぱり誰かおひとり少しでも関係することを知ってそうな方に「こんなこと考えてるんですけど」と相談する。そこがまず第一歩で、芋づるでいろんな人を紹介してもらって話をしていく、というプロセスになります。

ここで大切なのは、「こんなこと考えているんですけど」という、いわば仮のWhatをまず考えておくことです。芋づるでいろんな方とお話をする過程で修正、進化させていくつもりで、自分たちの「Why・目的」をきちんと押さえたうえで、仮バージョンの「What・目標」をまず作ることから始めることをお奨めしたいですね。

二つ目の「反対者への対応」は難しい話ですね。万人が賛同してくれるような事案はなかなかありません。パブリックアフェアーズというよりも、むしろ政治ってそういうものだと思うんですが、まずは、反対派が「本当は嫌だけど受け入れ可能」という妥協点を探ることが非常に大事だと思います。

反対者が受け入れ可能で、かつ、自分たちの元々の目的を犠牲にしない妥協点を探ることを目指し、どうしても無理なときに、反対者を静かにさせるにはどうしたらいいか、という別のアプローチを考えることになると思います。

質問者2:大企業のWhy-What-Howをよく理解したうえで、連携候補を捜しましょう、という話について、とりわけ非営利セクターの人間には難しい場合もあると思うんですが、どうやったら企業のWhy-Whatを自分で見つけていけるか、ヒントをいただけけないでしょうか。

高橋:教科書的には、「アンテナを高くしましょう」的な話になると思うのですが、非営利セクターの皆さんが独力でやるための効果的な方法については、私もすぐには思いつきません。我田引水で恐縮ですが、私どもにご相談いただくのがいいと思います。

私ども営利のコンサルティングファームなんですが、非営利の世界の方とお付き合いが多い会社でもあります。例えば企業さんとお話してて、「そういう課題感があるなら、こういうNPOさんと組むのも一案です」という提案ができたりとか、逆に、NPOさんとお話をしていて、「そんな社会問題に取り組んでらっしゃるんですね。〇〇社と相性がいいかもしれません」と思い付いたりできます。社内に、いろんな分野につながりが多い者がいるので、社内の会話の中で新たな連携候補が発掘されたりといった感じです。明確な回答でなくてすみませんが、ヒントになれば幸いです。

我々も、新たなご縁は大歓迎ですので、ぜひご相談いただければと思います。ちなみに、「どんなお話でも30分喋ったらお金ください」とかいう会社では全然ありませんので、いろいろ情報交換させていただければなと思っています。

質問者3:やや興味本位の質問を2つさせてください。我々のようなNPOの場合、「自分たちでやりたいことをやっている」という面があります。一方で、マカイラさんのようなコンサルティングファームは、クライアントあってのお話で、必ずしも自分がやりたいこととは限らないケースが多いように思うんですが、この点、どんなモチベーションでやられているのでしょうか?

また、高橋さんが個人的に、我々NPOのような立場だったら、日本社会で今何をしたいですか?

高橋:ありがとうございます。まず前半のご質問。確かに私たち、基本クライアントからのご依頼をいただいて、クライアントからフィーを頂戴しています。その意味で、NPOの皆さんのように、自分たちがやりたいことだけをやってるわけではないというのはおっしゃる通りです。

ただですね、実は我々、ちょっと偉そうな言い方なんですけども、わりと仕事とお客様をを選ぶ会社なんです。偉そうなこと言って本当に恐縮です。

具体的には、3つの判断基準をもっています。まずは、Innovation FocusとSocial Good。何らか世の中を、良い方向に向かうように前に進めることを目指していること。ビジョンである「ホリスティックにアップデートし続ける社会」に資するようなお話であることを重視しています。

また、No rent seeking、新たな独占的な利権づくりに与さないことも重視しています。もちろん、何がGoodなのか、本当に新たな独占的利権づくりに繋がらないか、判断はいつも難しいです。微妙な話になると、社員全員で受けるべきか否か議論することもあります。こういう会社ですので、お金のためにやっていることも営利企業ですからゼロではないですが、比較的少ない会社かな、と思っています。

後半の、私個人のやりたいこと・・・。この会社のビジョン、ミッションとは別に、私の今のパーソナルミッションとして、「活き活きとした、生きやすい世を創る」を掲げています。

「活き活き」というのは、イノベーションがどんどん起きて進歩してかないとこの社会は危ない、と思っているから。一方で、いろんな困難いろんな人がいる中で、「生きやすさ」って一つに定まらない難しい問いですけども、それでもなお、出来るだけ多くの人がそれぞれ、生きやすい社会にしていけたらいいな、と思っています。

そこに役に立つ、ある意味コンサルタントなんで一個に絞れないっていう性分ではあるのかもしれませんけれども、この方向に向かう話を営利企業でも、非営利の団体でも、お手伝いしていきたい思っています。

 

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制作:PublicAffairsJP編集部

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