内閣官房 辻恭介さん:知が交わる社会にむけた行政の課題

PA人材名鑑

パブリックアフェアーズ(PA)のフィールドでは、多くの官僚出身者が活躍しています。

パブリックなマインドを持ったうえで、異なるセクターをつなぎコラボレーションを生み出す機能を果たすPA人材が増えるためには、官と民の間の人材の流動が不可欠。その流れを潜在的にサポートする働き方改革や公務員の兼業を担当する、内閣官房辻恭介さんにお話をうかがいました。

辻恭介さんプロフィール
1999年、総務庁(当時)に入庁。2007年より、国家公務員制度改革、2014年より、働き方改革など、主に行政管理・人事制度を担当。財務省に出向時には予算査定にも従事し、また、2011年に、内閣府で東日本大震災の被災者支援の政府内とりまとめ役を担当。現在は、内閣官房内閣人事局で企画官として総括を担当する。

ーー辻さんのキャリアについて教えてください。

1999年、当時の総務庁に入庁し、2007-8年、政権交代前で天下りが問題となった、国家公務員制度改革、2014年-17年に、働き方改革など、主に行政組織の信頼確保、パフォーマンス向上に関する仕事を担当してきました。現在は、内閣官房内閣人事局で企画官として総括を担当しています。

働き方改革については、私の妻が育休から復帰しようとするタイミングであり、また、周囲の多くの女性職員が周りに言い出せない不安や不満を抱えているのを感じていたところで、男女イーブンに働けるようにしなければとの私自身の問題意識ともちょうど重なりました。同じことを考えている人が別の部局、別の役所にもいることに気づき、省庁を横断して仲間ができていき、改革への一つの流れを作ることができたと思います。

制度としては、整ってきているとは思いますが、この流れを次の世代、後輩たちにつなげていってもらいたいと思っています。

ーー働き方改革をさらにすすめるには何が必要でしょうか?

懸念しているのは、量や時間に目が行きがちですが、同時に仕事の質も変えることができているのかです。この仕事は本当に必要なのかどうかと、本質に立ち戻って考える姿勢が必要だと思います。

役所の仕事で言えば、上から指示された仕事でも、本当に必要な仕事なのかを疑問に思ったりおかしいと思うことがあれば、上司に相談してくれれば一緒に分析して考えることができます。

実際、私のところにくる相談のうち3割は過剰品質に陥ってしまった結果であったり、今の時代にそぐわない不必要な業務です。どうやったら効率よくできるのか、省ける仕事はないのかを考え、自分で仕事をデザインするマインドが必要だと思います。

ーー今、一番課題だと思っていることは?

世の中には良いこと考えている人がたくさんいるのだけれど、この人とこの人がつながっていないよねと言う事例をたくさん目にしていて、その人たちをつなぐ役割の人が必要だなという課題意識がずっとありました。

世の中の課題が複雑になり、一つの組織だけでは対応できなくなってきた。また一つの組織にとどまっている人材だけでも解決できないようになってきた。異なる分野の人が持つ知的財産を総動員して、解決していくような、知が交わるようなぐちゃぐちゃな社会にしていかないといけないと思っています。

そしてその一つの策が、属する組織を変えていくことであり、また転職しなかったとしてもオフィスに縛られずに働いたり、兼業などでより気軽に人材が交われるような環境を作ることだと思っています。

ーー昨年国家公務員の兼業が解禁になりました。パブリックアフェアーズ人材として、公務員に期待される部分は大きいですよね。

実は、もともと国家公務員は兼業できるんです。NPO法人や一般社団などで公益的な活動を行う組織であれば有償の場合は申請をあげれば兼業が認められます。また無償であればそもそも申請の必要がありません。

しかし、例えばNPOでの有償の兼業は、過去3年で20件ほどしか申請されていないのが実態です。要はほとんどの人が知らないということなので、昨年、きちんと必要な制度周知を行おうという閣議決定がなされました。

省庁の中での仕事が「言われた仕事、指示された仕事」に終始してしまうと、課題を与えられないと動けない人材になってしまう。自分の業務のマンデートを超えてやってみたいこと、そういう仕事に対しては自分でリスクを取らなければなりませんし、自ずと自分で考えて動かなければなりません。働き方改革をすすめるうえでも、外に出ることによって経験を補うという観点から、兼業をすることには価値があると思います。

受理されるかわからず怖いという声もあるそうですが、拒否しようと待ち構えているわけではないので、もっと申請が上がってきてほしいと思いますね。実情としては、まだやって良いということが広まってないので、事例が増えてきたら、一般的になると思います。

内閣人事局の立場だと、各省の人事課にしかアプローチできないので、現場の職員の方にどう届けていくかが目下の課題です。私自身も、外部のイベントを個人的立場で手伝うことによって、より多くの公務員の人たちに知ってほしいと思っています。

ーー辻さんご自身が、転職や兼業をご検討されたことはあるんでしょうか?

はい。2013年ごろでしたが、先ほど述べた人と人をつなぐ役割の人が必要だという課題意識を持った時に、それが役所の中でできるのかできないのか、一度真剣に転職活動を検討したこともあります。しかし大企業の実情を見たときに、役所と同様で、より組織の中枢に近い経営企画を担う人材は、その企業で新卒から育ってきた純粋培養のキャリアの人に限られていました。

人材の流動化が必要だと言われ、プロジェクトベースでの人材の流動化は確かに進んでいると思いますが、それはまだまだ周辺にすぎません。組織の風を入れ替える、また血を入れ替えるためには、経営中枢に外部の人材を入れていけるようにならないと、より本来的な意味での流動化にはなっていかないと思いますね。

ーーこれまでの改革や制度化以外に、今後どのような仕組みが必要だと思いますか?

人材のプラットフォームが必要だと思います。役所側がいきなり公募をかけても広まらないし、うまくマッチングできない。こういう技術や知識を持った人が必要なのだけど誰に相談すれば良いのだっけという時の受け皿として、誰かが仲介してくれるだけでなく、緩やかに人と人がつながっている庭のような場所が欲しいですね。

今は組織がもつ既存のネットワークが現場を知るツールとして機能し、口をただ開けているだけで情報が十分に入ってきた時代ではなくなりました。実際の世の中がどのようになっているか伝わってこない、制度を考えるには全体を見なければならない中で、サービスを提供する側の目線しか持てていないというのが現在の行政の大きな課題です。実は穴ぼこだらけにもかかわらず、提供側がその穴ぼこが見えていない。

一人一人がいきなり複数のキャリアを経験してその目線を持つことは難しいので、まずは集合体としてさまざまな視点と知識を補完しあうような場所をつくりたいと思っています。

 

制作:PublicAffairsJP編集部

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