【PA Forum人材セッション第一回】パブリックアフェアーズに必要な知識・スキル・マインドとは(全文書き起こし)

PAイベント

2020年12月2日(水)、第一回「PublicAffairs Forum」を開催いたしました。

パブリックアフェアーズ——企業などが政府や世論に対して行う、社会の機運醸成やルール形成のための働きかけ——という領域は新しく、パブリックアフェアーズに必要な知識・スキル・マインドは、まだ明確ではありません。

そのため、パブリックアフェアーズの仕事に就くためにはどんな経路があるのか、その先のキャリアはどうなるのかなど、他の職種と比べると分かりにくい点が多々あります。

今回は4人の方をゲストにお迎えし、パブリックアフェアーズを行う人材の持つ知識・スキル・マインドに焦点を当て、具体的にどのような知識・スキル・マインドをどの程度の深さで持つべきか、それはどのように身に着けられるのかといった点についてディスカッションしました。

 

<登壇者(五十音順)>

栫井 誠一郎氏
(株式会社Publink 代表取締役社長)

重松 大輔氏
(株式会社スペースマーケット 代表取締役社長/一般社団法人シェアリングエコノミー協会 代表理事)

別所 直哉氏
(紀尾井町戦略研究所株式会社 代表取締役/京都情報大学院大学 教授)

吉川 徳明氏
(株式会社メルカリ 会長室 政策企画ディレクター/一般社団法人Fintech協会 理事)

草野 百合子/モデレーター
(パブリックポリシーキャリア研究所 所長/マカイラ株式会社 コンサルタント)

※当日の動画アーカイブは下記から視聴できます。イベント詳細はこちら

主催:一般社団法人パブリックアフェアーズジャパン

パブリックアフェアーズ領域の大きな課題、人材不足について

草野百合子(以下、草野):本日は、パブリックアフェアーズに必要な知識・マインドとは何かということで75分間、セッションを行いたいと思います。趣旨を最初にお話しさせていただきます。

まず「パブリックアフェアーズ」とは、ざっくり言うと企業や民間の団体が、政府やNPO・NGO、マスメディアなどが、公共の社会的なプレイヤーと戦略的にどういう風に関係を構築していくか、という活動です。関係構築の仕方としては、ルール形成や(規制)緩和をしていく。そもそもルールがつくられないところでは、PR(Public Relations)なども入ってきます。

今回どうして「人材」というテーマを持ってきたかと言いますと、背景として、先日(2020年9月)に「Public Affairs Summit」(主催:一般社団法人パブリックアフェアーズジャパン)というサミットを行ったのですが、そこで「パブリックアフェアーズにおいて人材が非常に足りないんじゃないか」という話になったんです。

(パブリックアフェアーズは)新しい領域だから人材が足りないのですが、(現在、活躍している人たちは)どういう経験値を持っているのか、どういう風にしたらそういう人を育成できるのか、という話があったんですね。

例えばメルカリの小泉会長からは、「日本のスタートアップが今後、ルールが形成されていないところに乗り出していくときに、事前にしっかりコミュニケーションを行っていかないとなかなか育たないんじゃないか」といったお話をいただいております。

この件について、今までパブリックアフェアーズの領域で活動してきた方、それから経営者として社内にパブリックアフェアーズという役割を置いていらっしゃる方、(公共と)民間とをつなぐ仕事をしていらっしゃる方——そういったみなさまに、どうしていったらいいのかをお話しいただきたいというのが、(今回のイベントの)大きな問題意識となります。

また私たち(マカイラ株式会社)が人材紹介業をやっているなかで、個人のキャリアから見るとパブリックアフェアーズとはどういう領域で、今後どういう展開の可能性があるのか、(キャリアの)相談を受ける方から聞くこともあって。

(この件について)私たちは私たちで見解を持っているのですが、ぜひ経験豊富な方、経営者のみなさまに教えていただけたら嬉しいなということで今回、(このテーマを)設定いたしました。

大前提として、各企業の状況に適したパブリックアフェアーズのやり方があって、そもそも事業の規模や産業の領域によって必要なスキルは変わってきますが、(パブリックアフェアーズ全体の)大きな枠組みとしてどうなのか、というところをお話しいただければと思います。

登壇者紹介

草野:前置きが長くなりましたが、まずみなさまのご紹介をさせていただいて、それから自己紹介をそれぞれしていただければと思っています。

まず、パブリックアフェアーズの領域で経験を積まれて、(人材)育成もされてきた、紀尾井町戦略研究所の別所さまです。

別所 直哉氏(以下、敬称略):別所です。よろしくお願いします。

草野:よろしくお願いします。それから、パブリックアフェアーズの領域でご経験を積まれて、チームを作られてきているメルカリの吉川さまです。よろしくお願いします。

吉川 徳明氏(以下、敬称略):よろしくお願いします。

草野:対して、経営者の立場で社内にパブリックアフェアーズの領域を作り、かつシェアリングエコノミーを作っていらっしゃる、スペースマーケットの重松さま、よろしくお願いします。

重松 大輔氏(以下、敬称略):よろしくお願いします。

草野:次に、国と民間の効率的な連携、コラボレーションを進めていらっしゃる、Publinkの栫井さま、よろしくお願いします。

栫井 誠一郎氏(以下、敬称略):よろしくお願いします。

草野:ありがとうございます。こういったみなさまにお話しいただきたいと思っておりますが、最初に自己紹介をそれぞれお願いします。五十音順に、栫井さま、重松さま、別所さま、吉川さまの順でお願いできればと思います。まず、栫井さま、よろしくお願いします。

栫井:Publinkの栫井と申します。私はもともと経産省に2005年に入ったのですが、縦割りだと社会にイノベーションが起きないなと現役官僚のときに痛感しまして、2011年に経産省を退職し、その後3回起業しています。1回目はシステムの受託、2回目は動物医療のプラットフォームビジネス、今はPublinkという会社に100%フルコミットしています。

官と民をもっとオープンソースにつなげていく、お互いの気持ちや感情のところでもっと共鳴して進んでいこうというのをサポートする会社を、霞ヶ関でやってます。事業形態としては、イベントやコンサルティング、コミュニティ(運営)などがあり、深めのロビー活動に近い領域は自社ではやっておらず、あくまでもいろんな方をつなげていって、専門家の方とうまくコラボレーションしていくことでこの業界を盛り上げていきたいと思っています。

現役の官僚だけのコミュニティを作ったり、辞めた官僚のコミュニティを作ったりして、それぞれ130人、200人ほど(メンバーが)います。そんな感じで盛り上げていこうと思います。よろしくお願いします。

草野:よろしくお願いします。ありがとうございます。次は重松さま、お願いします。

重松:シェアリングエコノミー協会の代表理事と、株式会社スペースマーケットの代表をしております、重松と申します。スペースマーケット自体は、スペースのシェアリングのプラットフォームを2014年からやっておりまして、会議室やパーティースペースなどを貸し借りできるという事業をやっております。

貸し借りの領域はかなり広くて、一般住宅からスタジオ、スポーツジム、お城とかも貸し借りできるのが特徴です。利用用途も多岐にわたっておりまして、パーティー、撮影収録、趣味、スポーツなど、さまざま利用されています。

シェアリングエコノミー協会は2015年に設立し、代表をやっているんですが、現在、300社以上の会社に登録、加盟していただいています。シェアリングエコノミー協会のホームページも充実しているので、是非ご覧いただければと思っております。

こういった「シェアリングエコノミーマーク」を作ることなどを、総務省と連携して行っています。あとはイベントですね。業界レポートを出したりと、いろんな活動をしております。以上となります。よろしくお願いします。

草野:ありがとうございます。次に、別所さま、お願いします。

別所:簡単な資料があるので、資料を共有させていただきます。私は大学を卒業して製薬会社に入ったのですが、その後ヤフーという会社の法務を20年以上やってきております。ヤフーでは法務に「パブリックポリシー」というパブリックアフェアーズの領域の部署を作って仕事をしてきた経緯があり、その延長線上で紀尾井町戦略研究所をやっています。

仕事を通じて、ここにもいくつか書いてある通り、検索エンジンのための著作権法改正や、税法の改正、そういったものに民間企業の立場から関わった経験があり、それらを後の人たちに活かしていけないかと考えています。

私の著書、『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』でもご紹介させていただいております。興味があれば、そちらもよろしくお願いします。今、大学の方でも「ルールを変えられる」という話もしておりますので、できるだけ多くの若い人にルールメイキングに興味を持っていただいて、取り組んでいただければと思って活動しております。

草野:ありがとうございます。では最後に、吉川さま、お願いします。

吉川:よろしくお願いします。メルカリの吉川と申します。もともと8年間、公務員をやっていました。2006年に経産省に入り、結構ふらふらといろんなことやっています。大学でも経済学部で、大学院でも通商政策の研究をしていたものですから、通商政策に携わりたいと思い経産省に入りました。

2年経産省で仕事をして日銀に出向し、国内の株式市場のモニタリングをしていました。IT業界と接点ができたのは役人になって3ポスト目です。3.11の震災対応でITの各社と一緒に仕事することがあって、ここで結構、ITっておもしろいな(と思い)、民間でも公共領域やルール、政策に近いことができると知りました。

その後、内閣官房に行ったのですが、そのときにヤフーと一緒に仕事したのが楽しかったこともあって、2014年の年始にヤフーに入りました。このとき、別所さんが政策企画本部のヘッドのような立場でやっていて、僕はその中で自分のチームを持ってやっていました。

今日、この後の話に出るかもしれませんが、ヤフーや楽天など日本の老舗IT企業の「公共政策」と呼ばれる部署には20〜40人単位で人がいて、僕が2014年に入った時点では、かなり組織として完成度が高くなっていました。こんなに完成度が高いと自分のやることがないなとも正直思い、(次は)イチからチームを立ち上げてみようということで、2018年にメルカリに移って今に至ります。以上です。よろしくお願いします。

官民の間で「フラットな関係性」を築くことが重要(栫井)

草野:それでは、さっそく本題に入っていきます。最初にみなさんにお聞きしたいと思っているのは、この会のテーマに置いた「パブリックアフェアーズに必要な知識・スキル・マインドはどういうものだと思いますか?」ということです。

栫井さまは、パブリックアフェアーズというより双方をつなぐ役割をされているので、こういうスキル、知識、マインドを身につければ仕事ができる、などいろいろあると思うのですが、「こんなことを知っているとよりつなぐ役割がやりやすいんじゃないか」というのがありましたら、お願いできますでしょうか。

栫井:わかりました。1つは、官民連携といってもいろんなレベルのものがあると思うのですが、私の方では中央省庁とのコラボレーションを中心に考えていることが多いです。

そのとき、官側も民側も成長していく必要があるのですが、上下関係をなくすのが大事で、そうすることでフラットな関係を築けます。陳情したりいろいろするのですが、政治側や行政側が受け取るだけ受け取って、あとは「まあ考えとくよ」だとなかなか本質的なイノベーションが起きないので、次のイノベーションを起こすためにフラットな関係でお互い言い合える関係を築くのが大事です。

私共で「パブリンガル」という言葉を勝手に作ってしまってるんですけど、パブリックと民間では行動原理、言葉、思想、何をしたら褒められるかも全然違うので、その文化みたいなものをお互いに理解していくところで、お互いの文化やニーズにちゃんと向き合って(いく必要があります)。

特に霞ヶ関の人に関してはみんな淡々とロボットのように夜中まで働いているみたいなイメージがあるので、自分と同じ血の通った人間で感情があって、「こういう仕事がしたい」という思いがあることを理解し、相手にフラットに向き合うことが非常に大事なのかなと。そういうマインドを持った上で、経験を積んでいくのがいいと思います。

草野:ありがとうございます。フラットな関係を築くというところ、すごく難しいと思うのですが、どうやったらフラットな関係を築けるのでしょうか。

栫井:そうですね。企業の方には、企業間のアライアンスをどうやって組んでいくかと比較していただくとわかりやすいと思うんですけど、相手が何をしたら喜ぶか、相手が何の課題を抱えているか(を考えること)ですね。官の人たちもそれは同じで、課題を抱えている人が多いなと思います。

政策を考えるにあたり、考えているだけでは絵に描いた餅で終わってしまうので、どうしたらこれがちゃんと社会に実装され、実現するだろうかというときに——(例えば)政治家や官僚のパワーポイントって格好いいことしか書いてないんですけど(笑)、「何困ってます?」と聞くと、困りごとが出てきたりするので、そこの困りごとに対してビジネスの力で一緒にやっていきますよ、とコミュニケーションを取ることが一番のポイントかなと思います。

草野:向き合っている課題によって、どんなスキルや経験が必要かが違ってくるというイメージですか。

栫井:そうですね。

スタートアップで活躍するパブリックアフェアーズ人材とは

草野:ありがとうございます。次に重松さんにお伺いしたいのですが、例えばスペースマーケットさまですと、どういう方がパブリックアフェアーズをされていて、その方はどういう知識・経験・スキルを持っているか教えていただけますか。

重松:これが、ちょっと前のシェアリングエコノミー協会の組織図です。代表、理事はシェアリング系のサービスをやっている会社の社長が多いです。事務局長などをやっている人は、主にスタートアップから人を出していますね。

特に事務局をやられている方のキャリアでいくと、官僚経験があるとか、ずっとロビー(活動を)やっていましたという人はほとんどいなくて、企業の広報、経営者、元市議会議員などが、マカイラの藤井さんや安井さんに教わりながら実地で(仕事の仕方を)覚えていった人が多いですね。

我々の会社のメンバーで言えば、積田はもともとNTT東日本にいて、1回自分で起業し、その後、地元のNPOを運営したりして、この業界に興味があって、シェアリングエコノミー協会の立ち上げにあたって(パブリックアフェアーズに)取り組んでもらい、イベントは彼が実装しています。

石原はもともと弁護士のキャリアがあって、スペースマーケットには社員弁護士としていてもらい、この業界団体、認証制度の立ち上げを彼が実質回しています。それと同時に、スペースマーケットの上場の実務をやっていたので、彼はまだ30代前半なんですけど、上場実務がわかるし、ロビーもわかるし、2つのヘビーなところをやってきたということで、結構引っ張りだこですね。いろんな会社の顧問に引っ張りだこです。

(また)小池という社員がいて、彼女はスペースマーケットにもともとPRでジョインしてもらい、この領域に興味があったので、この前まで事務局の渉外部長を彼女がやっていました。今は渋谷区観光協会のナンバーツーのような感じで、実質彼女が(実務を)回しています。キャリア的にも、シェアリングエコノミー協会(のパブリックアフェアーズ活動)をやったのはステップアップになったかなと思っています。

草野:ありがとうございます。重松さまのシェアリングエコノミー協会の事例を聞いていると、(みなさんが)この領域にもともと興味を持っているというのが大きいのでしょうか。

重松:そうですね。

草野:あとは弁護士としての経験や、PRというよりは——。

重松:GR(Government Relations)ですね。基本的な知識のある人が多かったですね。

草野:そういうところが必要なスキル・経験としてあるんですね。

重松:そうですね。

草野:こういう方々は、どういうところに興味があるのでしょうか。

重松:いろんなタイプがいましたけど、シェアリングエコノミーの世界観にまず共鳴してもらって、なおかつ政治家や官僚に対して、新しい産業としての理解が薄いところをきちんと伝えて、政策をきちんと作っていくことで、促進というより邪魔をされないルールメイキングに興味がある人たちが多かったですね。

草野:ありがとうございます。みなさんのなかに、もともと「ルールメイキング」(に対する興味)が頭にあった感じなんですね。

重松:そうですね。

パブリックアフェアーズに携わるうえで重要な力とは

草野:次に、別所さまと吉川さまにお聞きしたいのですが、お二人はパブリックアフェアーズについて今までもイベントに登壇していただいて、こういった政策の申請に関する知識、法律に関するコミュニケーション能力、あとは視座が高いとか、そういうもの(スキル)が何個かあると思うのですが、2つか3つずつ、重要そうなものを挙げていただくとしたら、どういったものだと思われますか。一言で述べられることも多いのですが、さらにその言葉を使わずにどう言えるのかもお願いします。吉川さま、お願いしてもいいですか。

吉川:法律がちゃんと読めて、「ここをこう変えたらいいだろうな」と法律をいじれる、そういう法律の読解ができるのは必要だなと思います。めちゃくちゃ法体系を理解して深いところまで……というよりは、法律の解釈をどう変えていくといいか、どう変えていくと法律の趣旨に従いつつ新しいビジネスになるか、というのができる知識が必要ですね。

あとは物事をどう動かすかのプロセスがよく見えている人ですね。霞ヶ関、政治における物事の決まり方とか、一年の政策が作られるカレンダーが頭に入っているというのが、(パブリックアフェアーズの仕事を)実行していく上では大事かなと思います。

栫井さんもおっしゃっていましたけど、法律の知識があって、スケジュールなど地面が見えていたとして、最後は相手を説得していかないとダメなので、結局、異文化に飛びこんでいってコミュニケーションできる人じゃないときついですね。

自分のコミュニティの言葉でしか話せないときついので、どこ(のコミュニティ)にでも入っていって、相手に合わせてコミュニケーションができる、相手の言うことを全部聞くのではなく、相手の立場に合わせて言葉や文脈を調整していけるという意味でのコミュニケーション能力ですね。

草野:ありがとうございます。それでは別所さまにも(同じ質問を)お聞きしてから、深く聞いていきたいと思います。

別所:スキルのところは、既に吉川さんに言われてしまいましたね。リーガルスキルは必要だと思います。ルールメイキングということを考えると、最後に作っていくものは法律なので、法律の条文が読めるというか、そういう知識は基本的に必要ですし、どこを変えなきゃいけないかを知っているのも必要です。そういうわけで、私がプロフィール(自己紹介)のときにお話ししたように、法務部門の中にパブリックポリシーを持っていたということがあります。

もう一つマインドの面で言うと、粘り強さ、諦めずに社会や社会デザインを変えたいと思ってくれる人がいいですね。法律を変えるというのは時間もすごくかかるんですね。日本で法律を変えようと思うと、通常国会が年に1度なので、年に1回しかチャンスがなく、そこを逃すと翌年、ちょっとずれるとさらに翌年になっていくんです。

数年単位でやっていくことを考えて、粘り強く頑張れる人が重要だと思っていますし、そのためには味方が少ない状態から味方を多くすることに苦心し続けることがマインドとしては重要かなと思います。

ルールメイキングのプロセス、構造を理解することが重要(吉川)

草野:ありがとうございます。最初に、吉川さまのおっしゃっていたことについて、2点お聞きしたいことがあります。

2点目で挙げていた、プロセスが見えているというところなのですが、カレンダーが見えているというのは、(シンプルに考えると)カレンダーを誰かがまとめてくれたらそれを読めばいいじゃないですか。でもそうではなくて、「こういうところまでわかってないとダメなんだよ」というところって、どんなことなんでしょうか。明文化されていないことがあるのでしょうか。

また3点目で、異文化の相手に合わせてコミュニケーションができるというのは比喩としてわかるのですが、吉川さまのなかで「異文化」と感じるのはどんなところで、「こうすればうまくコミュニケーションできる」というのはありますか? その点、どんなイメージなのかを教えていただければなと思います。

吉川:1点目ですが、カレンダーは2種類あるかなと思っていて、ざっくり大まかなものと、アクションとるときの細かいのがあります。

ざっくり大まかなものは、さっき別所さんが言ったように、国会に法案を提出するにも1月から6月くらいまでしか通常国会が開いてないので、国会が終わる5〜6月に法律の提案を持って行っても遅いですね。3〜4月でも遅いのですが。(そうした)大まかな仕掛けタイミングがわかっているのが一つですね。これは調べればわかるので、そんなに難しくはないですね。

もう一つの細かい具体的なスケジュールはやっぱりその時々で違うので、一般則はありません。その時々でスケジュールを把握できる、聞きだせる関係性づくりが大切です。カレンダーと言ってしまいましたけど、プロセスが見えていることが大事かなと。

これは一例として出しますけど、日本の政策はこんな感じでできています。〇〇省で検討しているものは、単独で検討していることは少なく検討会などがあるので、ここに委員として滑りこむとか、ここの委員の先生方に働きかけるというのがやるべきアクションになります。

より難しいのが、〇〇省と自分たちの意見が対立したときにどう動かしていくかとなると、〇〇省に行くだけではダメで、こっち側の与党〇〇部会に持って行こうとか、もしくは〇〇省の上にある内閣官房に持って行こうとか、与党とも〇〇省ともうまくいかなかったら、残っているプロセスは国会だから国会に何かやっていこうとかあるんですね。

(そうした)プロセス、構造が見えていないと先回りして動けないので、こういう構造が頭に入っているのは大事かなと思います。いろいろ言った要件をすべて一人の個人がやるのは無理で、そんなスーパーマンはいないので、チームで実現していくことが大事です。

批判や異論と向き合う“異文化コミュニケーション”

草野:2点目の、異文化コミュニケーションについてはどうでしょうか。

吉川:これはヤフー時代に経験させてもらったのですが、メディアサービスにおいては本当にいろんな立場の方と接することが多いんです。ヤフーなら「ヤフーニュース」もあれば、「ヤフー検索」も「ヤフー知恵袋」もあって、本当にいろんな人がいろんな意見表明をしていて、そこに対していろんな批判があるときに、ヤフーとしては表現の自由を尊重したいので、なるべくネット上で皆があれこれ言う自由を保障したいんですね。

でもやっぱりネット上のことなので、「削除してくれ」という声が来ていて、そのときに「削除してくれ」と言ってきている人に対して、「やっぱりこれは削除するべきではなくて、残すべきですよね」というコミュニケーションをいろんなところとしていました。

宗教団体とか、外国のNGO、BBCみたいな海外のメディア、普段ビジネスの世界ではあまり接することがないような方々と接して、彼らは彼らなりの正義で動いているので、ともすれば「面倒くさいからネット上の言論を放置しているんでしょう」となるところを、「我々はこれを本当に大事だと思っているんですよ」と理解してもらうために飛びこんでいくのは僕はおもしろかったなと考えています。意外とそれをやる人がいない。

草野:反対している人とそもそも話そうとする、アクセスするということですよね。

吉川:そこはすごく、この仕事の魅力かなと思います。

草野:「話そうとする人がいない」というのは、単にやりたくないというか、断られる、怖い、ということでしょうか。

吉川:異論ある人のところに行くと、最初はすごくいろいろ言われてしまうので。私もヤフーで象牙が売られることに異論があったとき、(はじめに)浅草の象牙組合の会館に行ったら、「人を迎えるときにこんなに足を開くのか」というくらい皆ふんぞり返って座っていて仰天したんです。そこで喧嘩みたいなコミュニケーションから始まったんですけど、(やがて)象牙組合の人たちが護国寺で象牙の供養をするとき、その供養にも呼ばれるようになったりしました。

草野:すごいですね。

吉川:そういうおもしろいこともありました。

長期的な活動について、社内外の理解をどう得るか

草野:ありがとうございます。別所さまからも「粘り強く」「諦めない」というお話も伺ったんですけど、数年待ち続けるということはつまり、数年成果が出にくいということもあるのではないかと思っています。それは政策企画の部署からすると、「成果が出てない」といわれてしまいがちなところで、どのように(社内の)理解を得ているのかをお伺いしたいです。

重松さまにも、何年も取り組んでいて、何年も成果が出ていないものがパブリックアフェアーズの領域であったときに、それをどう考えるかをお伺いできればと思います。

別所:パブリックアフェアーズの領域って基本的に時間がかかるものなので、時間がかかることに関して、セクションとしてそこを理解しないといけないですね。会社という組織で見たときに、全員がそれを理解できるかというとそれは無理ですが、トップの理解は必要ですね。その間、走り続ける必要があるので。

例えばヤフーにいた頃、公職選挙法の改正があって、「ネット選挙できるようにしよう」というのがあって、それも結構時間がかかったんです。さまざまなことをやっていこうと、社内に協力をお願いするんですね。

インターネットを選挙に活用できるようになって、(他の社員は)自分たちにどんなメリットがあるんだと思っているわけですよ。政策企画をやっている人たちは自分たちの仕事だと思っていますけど、他の人たちにはすごく遠い世界なんです。

遠い世界だと思っている人たちに説明して理解してもらって、いろんな人たちの理解を重ねていくのが重要だと思っています。社内で理解されないものが社外で理解されるわけはないので、こういうところを丁寧にやっていくしかないかなと思います。

社内の場合もそうですけど、一番大変なのは真反対にいる人たちと話すことです。正反対にいる人たちを避けては通れないので、パブリックアフェアーズ、ロビーもそうですけど、民主主義の一部のプロセスなので、反対の人たちの意見も聞いた上で、どういう風にそれを仕上げていくのか、多くの人たちと接していく、話していくという努力なしにはできないですね。それは社内外問わず、宿命かなと思います。

草野:ありがとうございます。重松さま、お願いします。

重松:シェアリングエコノミー協会という業界団体は2016年1月に作ったのですが、(当時)スペースマーケット自体が設立2年ほどで、まだシリーズBの資金調達の前で、体力的にも脆弱というか、ようやくプロダクトマーケットフィットしてきたかなというくらいの、スタートアップとしてはまだ入り口でした。

1社だけだったらやらなかったと思うんですが、ガイアックスさんのご理解があって、彼らがシェアリングエコノミー業界を引っ張っていくというのがあって、彼らに初期は非常に支援をしていただいたというのが大きかったかなと思っています。スタートアップの集まりではあったんですけど、この業界を開いていきたいという人たちがいて、しかも能力ある人たちがいたので、立ち上がったところがあります。

なかなかすぐに結果が出るものではなく、投資家筋からすれば、「何でお前らこんなことやっているんだ」となりがちなんですが、この業界でやっていきたいし、ルールメイキングのポジションも取っていきたい。そういうところもご理解いただき、結果的にうちも含めて去年から5社くらいこの協会から上場しましたし、投資というか、いろいろな積み上げをしておいたことが活かされていると思います。

本当に未成熟なベンチャーと一緒に急成長できるというところがあるわけで、そこに関わっていたメンバーはいい意味でキャリアアップしていると思います。一見大変でお金も全然ないのですが、やり続けていくことで結果的に皆ハッピーになると思っています。

草野:ありがとうございます。お金がない中で事業成長があり、「経験を買えた」感じだったんでしょうか。

重松:そうですね。

公共と民間、両方と同じ時間を共有し、困りごとに耳を傾ける(栫井)

草野:時間が来てしまったので、次の問いに移れればと思います。今まで(パブリックアフェアーズの仕事に携わるには)どういったスキル、経験、マインドが必要なのかというお話をしてきましたが、それらはどうしたら育成できるのか、身につけられるのか、といったところをお伺いしていきます。

最初に栫井さまにお伺いしたいと思います。先ほどおっしゃっていた「フラットな関係」を作るために、相手が何をしたら喜ぶか、(それを)しっかり読み取ること(力)は、どうやったら身につけることができるのか。それから、自分がリーダーとして他の人に身につけて欲しいときにどうすればいいか、どう育成すればいいか、どうお考えになりますか?

栫井:身も蓋もないことを言いますけど、最初はやはり「経験しろ」ということになりますね。

さっきのバイリンガルで例えると、バイリンガルの育成で一番簡単なことは日本とアメリカ双方で学ぶことなんですよね。弊社の一番欲しい人材は、パブリックも民間も両方経験した人です。そうじゃなく、片方しか経験していない人が来たときは、相手側の国のことをたくさん教えてあげる必要があって、教えていったことを柔軟に受け止めて伸びていってくれる人を成長させていくことが必要かなと思っています。

どちらを起点にするかなのですが、政治の経験がない人に対して、どのように行政が政治と一緒に仕事するかをトレーニングするとしたら、やはり、とにかく英語を習得するときもそうなのですが、座学で勉強するよりもどんどん話した方がいいのと一緒で、国や自治体や政治の人と話すのがいいですね。

できれば札束を積んで話しに行くとかではなくて、相手の困りごとを聞きに行くのがいいです。行政の方って、いろんな権利関係とか団体の軋轢に挟まれている中で皆さんがんばって仕事しているので、そこに寄り添ってあげながら、「自分たちはこう協力できるよ」とOJT的にやっていくのがいいですね。コミュ力、姿勢、あと経験値が大事かなと思います。法律の知識は覚えていく中でキャッチアップできるかなと思います。

草野:ありがとうございます。ここの経験をするのが難しいところなんじゃないかと思っています。経験することはできると思うのですが、そこに行くまでが難しいと思うんですね。例えば私は国家公務員が初めてのキャリアだったのですが、途中で違う事業を経験したいなと思って事業会社を受けると、「この人って行政の経験しかなくて(事業会社では)活躍しない(できない)じゃん」となると、両方の経験が(そもそも)できないと思うんですね。

企業スタッフの方でも、今、霞ヶ関は民間の採用とかしていますが、今やっていることで活きたスキルが他のところでは活きないことってあると思っていて、その(官民両方の)経験ってどうしたらできるのかについて、お考えはありますか。

栫井:そうですね。海外に行くのと同じように、フルタイムでそこに行くだけでなく、最近だと兼業とかもあります。(また)昔からある方法で、出向の他、官民のコミュニティなども出てきているので、一緒の時間を過ごすことにかけては実はグラデーションでいくつかあるので、その中から探していく形がいいかなと思います。

未経験であれば、プロボノ、副業から始めてみる。スタートアップ的なマインドで(重松)

草野:ありがとうございます。次に重松さまにお伺いできればと思っているんですけど、シェアリングエコノミー協会は官僚などのバックグラウンドを持っている方は少なく、企業の広報などをされていた方が多くて、その後に実地で経験を積まれていった形だと思うのですが、その中でパブリックアフェアーズ(人材)をどういう風に育成すればいいか、お考えを伺いたいです。

重松:そうですね。やはり現場を越える育成はないですね。スタートアップなどもそうなのですが、何かを教えてもらうというよりは走りながら覚えていくしかないなと思っています。まず強い興味があって、勉強を一生懸命できることが大事ですね。

プロボノ、副業から始めてみるとか、「これおもしろそうだな」と思ったらがっつり転職して入ってみるとか、そんな感じでいいんじゃないですかね。私も経験したことのないビジネスを始めて立ち上げているので、スタートアップ的な感じ、そういうマインドの方がいいんじゃないかと思います。

草野:先ほどの栫井さまへの質問と重複してしまうんですが、「興味があってプロボノしたいです」というときに基礎となる、「これができるからこそあなたのところでプロのボランティアをしたいです」とか、弁護士のようなわかりやすいスキルがはっきりあると、プラスの経験を積みやすいのでしょうか。

重松:そうですね。PRをきっちり回した経験があるとか、経営企画の経験があるとか、新しい領域のスタートアップで小さなチームを立ち上げたことがあるとか、何でもいいですね。それがなくても、「何でもいいから手伝います」みたいなのもありです。ざっくり優秀な人でも、スタートアップはいいんじゃないかなと思っています。

草野:ロビイングの経験はあるけど、広報は経験がない、みたいな人でも、広報の経験はできていくということなのでしょうか。

重松:そうです。両方できたら強いと思うので。さまざまな媒体で募集しているので、情報はいっぱいあると思います。

草野:ありがとうございます。大きいところで経験を積んだ人を求めているところに行っても難しいと思うのですが、そうじゃない人もウェルカムというか、とにかくやる気のある人を求めているところに行くといいんでしょうか。

重松:そうですね。ヤフーやメルカリのように大きな会社になると、ロビーのポジションでは一定の経験が求められると思うんですけど、シリーズAくらいのスタートアップだと、そういう人を採れない、来てもtoo muchなときもあるんです。

当然、フィーもそこまで出せないですし、そもそも会社もどうなるかわからないところがありますし。ある程度大きくなってきたら、CXOの下の執行役員クラスとか、そういうポジションもシェアエコ系でロビー活動が必要な会社は募集しているところもあります。

事業会社のチーム内では、どのように人材育成に取り組んでいるか

草野:次に別所さまにお伺いできればと思います。ヤフーは結構、成熟したチームと先ほど吉川さまもおっしゃられていました。もともと法律の知識がある方が対応してきて、その上で経験を積んでいったのかなと思うんですが、例えばチームでどういう経験をどのように積ませるかについて、どのようにお考えか、教えていただいてもよろしいでしょうか。

別所:そこはちゃんとしたプロセスや教育のシステムが出来上がっていたわけではないので、案件ごとにいろんなものを担当してもらって、それによって学んでもらっていたというのが正直なところですね。

(パブリックアフェアーズ自体が)新しい領域なので、体系的に整理されているものがなく、どうしても経験ベースになってしまうのですが、もう少ししたら体系的に整理をして、あらかじめあるものを読めばいいという風になっていかないと、広まっていかないと思います。

経験は非常に重要なのですが、経験した結果、失敗しか学べなかったというのは悲しいので、そこを避けていくためにも、今は難しいですけど、経験している人たちの話を聞くことは重要です。

ある程度組織が大きくなると、失敗した経験をそれぞれに持っているので、新しい方法をやってもらったりすることもできていました。大きな組織で仕事をするというのは、先輩や既に走っていた人の意見を聞きながらできたのでよかったかなと思います。それがないのであれば、誰かそういう人たちに話を聞く必要があると思います。

草野:ヤフーでは案件ベースで取り組まれていて、そんなに体系立てて(育成)はやっていなかったというイメージなんでしょうか。

別所:そうですね。案件ごとにアプローチの仕方も変わってきますし。大きなアプローチの方向は一緒なんですけど、ディテールになってきますと、課題の状態で細かいところが違ってくるので、一回経験すれば済むわけではないのが難しかったと思います。

草野:アプローチ方法がそれぞれ違うとおっしゃってましたが、そのアプローチ方法が上手い人と、仕事をしたことがない人を組ませるという形でされていたんですか?

別所:どこまでできていたかは、吉川さんに聞いていただければと思っています(笑)。

未経験から飛び込むなら、今「チャレンジしている」企業の方が間口が広い(吉川)

草野:吉川さまはヤフーで別所さまが上にいる形でチームを持って、チームの中で経験をどう積んでもらうかを考えていて、それを踏まえてこういうチームをつくろう、(人材)育成しようとされていたと思うんですけど、具体的にどのようなことをしていたのか、可能な範囲で教えていただけますか。

吉川:結構、ヤフー時代の経験を踏まえてやっているのですが、最初は中途ですらなくて、いるメンバーでやるしかないところからやっていました。

規模が拡大してきて、そういう(パブリックアフェアーズの)仕事がこなせそうな方を中途で採っていくプロセスがあり、私が入ったときには新卒で入ってきた弁護士とか、そうでなくても新卒で入ってきた人がそのまま政策企画に配属されることもあったりしたので、経験がある元官僚、新人弁護士の組み合わせなどでチームができていました。かなりOJTに近い感じですね。

(人材を)案件ベースで育てていくところはあったと思います。そこで経験を積んだ人がヤフーに残って管理職になったり、会社でチームを持ったりしているのもあります。一定の育成はヤフーも20数年この世界でやっているので、できているのかなと思います。

ただ(現在)、民間で純粋にやられていた若手の方から「メルカリの政策企画に入るチャンスがないですか?」とご連絡をいただくのですが、今のところ我々もまだチームを立ち上げたばかりで、会社自体も2,000人弱でまだひいひい言っている状態なので、まだちょっと未経験の方に入っていただいて育成する段階にはないと思います。

なので、もしヤフーとか大きいところ(会社)に未経験でも入れたらそこで経験を積んで、他で活かすというのもありかなと思いました。その機会自体少ないかなと思います。

最初に重松さまがおっしゃっていた通り、出来上がっている組織に行くと中途ばかりになってしまうので、今チャレンジしている企業に飛びこんで、一緒にがむしゃらに経験していくというところが間口としても広いと思うので、もちろんうまくいくかどうか、リスクもあると思うのですが、未経験で飛びこむならそっちの方が間口が広いかなと思います。

草野:吉川さまはメルカリでは、未経験というよりは経験のある方を採用し、その上で経験を積んでもらう形でやっていらっしゃるんでしょうか。

吉川:一部、社内異動という形で、別の仕事をしていて「おもしろそうだな」と思ってくれた方を受け入れる、我々もその仕事を見ていて、「大丈夫そうだな」と思ったら任せるというルートはできています。まだ、あまりその人を知らずに未経験の方に任せるというルートはないですね。いずれできていくと思うんですけど。

パブリックアフェアーズの経験を、次のキャリアにどう活かすか

草野:ありがとうございます。最後の問いなのですが、パブリックアフェアーズの仕事を通して得られる知識や経験が、パブリックアフェアーズの枠を出たときどういう風に役に立つのか、パブリックアフェアーズの経験を積んだことが次にどういうキャリアに活きるのか。

パブリックアフェアーズ以外のところに展開できる——例えば法務の方がパブリックアフェアーズの仕事をしたりとか。ヤフーの別所さまは法務からパブリックアフェアーズの仕事をされていました。パブリックアフェアーズの経験を積んで、それをベースに(キャリアを)展開するには、どういう方向があるのかお聞きしたいです。経営者の立場から、重松さまからお聞きしていきたいと思います。

重松:そうですね。規制ガチガチだけどこれから可能性があるようなマーケットで、創業する経営者とか、経営初期メンバーだとバリューが発揮できるんじゃないかと思います。あとは経営企画、チーフ・リーガル・オフィサーなど、そういうところもあるんじゃないでしょうか。

草野:ありがとうございます。規制がある領域で経験を積んでいると、直接その会社の事業の拡大に寄与できるからということでしょうか。

重松:そうです。ロビーができるかできないかも、参入障壁になりますから。

草野:その辺は、ルールに意識がない人よりもアドバンテージになるということですね。ありがとうございます。別所さまはもともと法務と政策企画の仕事をしてこられたと思うのですが、今の問いについてはどうお考えでしょうか。

別所:ベーシックなスキルについて、最初にお話ししたようにリーガルなスキルは必要だと思います。ただ粘り強くやっていくのは汎用性のあることなので、そういうところがカバー領域になっていくと思います。

(また)パブリックアフェアーズの重要な要素の一つに「広報機能」があるので、広報の専門家としてやっていくのもありかなと思います。パブリックアフェアーズの領域で得たいろいろな人脈を、キャリアに活かしていくのはあるかなと思います。

草野:パブリックアフェアーズの領域は広いので、携わっていた分野に関連する領域に進出する、みたいな感じですかね。吉川さまはその辺について、どういう風に思われますか。吉川さまはパブリックアフェアーズ(関連の仕事でメルカリに)転職してこられたと思うのですが。

吉川:別の職種でどうこうというのは、その人次第かなと。

草野:それはそうですね。

吉川:ある程度の実績を会社で示せるかで、一緒に働いている経営陣などは「この人はこういうところが強そうだな」などと考えると思うんですね。そこをどう自分で見せていくかだと思います。そこは皆さん、個別の事情に応じてですね。

官民の間で、人材が流動的に行き来できる環境が理想(栫井)

草野:求められている役割を果たしつつ、会社にどうそれ以上の成果を返せるかが大事だと思います。栫井さま、最後になってしまったのですが、官民の連携をされている中で、官に戻るみたいなこともお考えになっていると思うのですが、パブリックの経験が官に戻るときにどういう形で役立つのか、あるいはまったく役立たないのか、その辺はどう思いますか。

栫井:私としても弊社としても、官と民はもっと人材が行ったり来たりする流動的な社会が理想的だなと思っています。パブリックアフェアーズの領域の方は——「パブリンガル」という言葉を使いましたが、(官民)両方の文化に向き合ってきたバイリンガルな人たちなので、日本にいてもアメリカにいても、一つの言葉しか使えない人よりはできることが多いですよね。

具体的にそういう人が官にいたら何ができるのかということなのですが、政府がやろうとしてることって、掛け声だけかけるけど全然進んでいないことがあるんです。

例えば「DX」は20年前から言っていますが、IT化をやり続けている中で失敗の歴史だったりするわけです。やはり官僚や政治家の経験しかない人たちは、どういう仕組みを作って、どういう広報をすれば世の中やビジネスがついてくるのかを考えることが難しかったりするんですよね。

(そこに官民)両方をわかっている人が入れば、どうしたら官と民の掛け算になるのか、絵に描いた餅で終わらせずに実装していくのかということができます。現行の市場の中でのパイの食い合いじゃなくて、制度を含めた新しいル市場を切り開いていくのかというところのビジョンをもった経営者になることを期待したいなと思っています。

草野:一通り聞いたところでお時間になってしまったので、今回はこれで終わりにさせていただきます。今日は、いつもはふわっと聞いてしまうところを深く聞けてよかったです。今後もキャリア、パブリックアフェアーズの領域の発展、それだけでなく社会の変化への貢献について考えていきたいです。ありがとうございました。

 

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