2024年3月23日(土)・24日(日)にかけて開催された「民主主義ユースフェスティバル2024」にて、「社会課題解決のためのルールメイキング」をテーマとしたワークショップが開催されました。
イベントの主催者である日本若者協議会のメンバー、当日会場にいらっしゃった参加者のみなさんと共に、パブリックアフェアーズとは何か、そしてルールメイキングに向けて自分たちにできることは何があるのか、事例を交えて語り合いました。
「民主主義ユースフェスティバル2024」
2024年3月23日(土)・24日(日) 11:00-17:45
@駒沢オリンピック公園 中央広場


あいにくの天候にもかかわらず、会場である駒沢オリンピック公園には多くの人が訪れていました
「パブリックアフェアーズ」の基本についてレクチャー

ワークショップを行った会場サブステージ
ワークショップ冒頭、まずはファシリテーターを務めた横山 啓(マカイラ株式会社 ディレクター)から、「パブリックアフェアーズとは何か」について簡単に解説しました。参加者の中には、はじめてこの用語を耳にする方もいらっしゃったようです。
横山「世の中には新しいイノベーションがたくさん起きますが、それを社会に実装していくためにはさまざまなプロセスが必要です。多様なステークホルダーがいるのでうまく調整していかないと、いきなりルールを作るだけではうまくいきません。私たちは、そうした取り組みを会社として支援しています。
例えば『ロビイング』と聞くと、これまでは特定の企業と政治家などの間で、密室で行われる意思決定をイメージする方が多かったと思います。私たちが実践する『パブリックアフェアーズ』では、政府や自治体はもちろん、企業、NPO、業界団体、メディア、市民のみなさんなどさまざまなステークホルダーに対してきちんと働きかけ、関係者を巻き込みながらルールを変えたり、作ったりしていくことを大事にしています。
ルールメイキングで社会課題を解決しようとするときに重要なことは、ひたすら個人で主張を繰り返すのではなく、賛同してくれる仲間を増やして活動の幅を広げていくことです」
事例紹介:ジェンダー問題に関するルールメイキング
続いて日本若者協議会のメンバーであるAさんが、実際に行っている政策提言に関する取り組みの事例を紹介してくれました。
Aさん「日本若者協議会の中にあるジェンダー政策委員会では、2021年から痴漢問題に取り組んでいます。情報収集をし、問題を解決するための要望を10個ほど作成して、誰に何をお願いすればそれが実現するのかを考え、要望書を作りました。それだけでは不十分ですので、世論喚起をするために署名活動も行っています。要望書と署名を各政党や関係する省庁に提出し、意見交換をしてきました。聞いてもらって終わりではなく、その後のチェックアップも行っています。継続的な活動をすることによって、例えば要望が政府の報告書に取り入れられたり、公共交通機関の女性専用車両が増えたりと、具体的な結果につながっています」
取り組みを進めていく中で難しかったのは、やはり「誰に」話をしにいくか、具体的に「何を」要望として出せばいいのかを判断することだったといいます。例えば同じ「女性専用車両を増やしてほしい」という要望であっても、都営地下鉄とJR線では、それぞれ要望を出す対象が異なってくるためです。
Aさんたちは、専門的なノウハウを持つ他の協議会メンバーからアドバイスを受けて、活動を続けているそうです。
「身近なところで変えたいルール」について全員で語り合う
横山「日本ではほとんど教えられないのですが、スウェーデンの小学校の教科書には『世論を形成し、それによって決定に影響を与えるためのコツ』が明記されています。私もはじめて知ったとき、とても驚きました」
私たちは、法律、規則、規範に従います。
すべての社会は変化します。
規範が変わることもあります。
たとえば、髪型やファッションを変えて規範を打ち破ってやろうとするなら、それを何度も繰り返しているうちに、それでいいのではないかと思われるようになるかもしれません。(中略)
あなたも自分のためにメディアを利用することができます。
たとえば、学校のカフェや自由時間の遊び場が閉鎖されないように、あなたが誰かに影響を与えるためには「サポート」が必要です。そのような決定にうまく影響を与えるためには、なるべく多くの人々から賛同を得なくてはいけません。
通例、このことを「世論を形成する」と言います。もし、あなたがオピニオンリーダーとなれれば、より多くの人々があなたの考えを支持するようになるでしょう。
出典:ヨーラン・スバネリッド著『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』新評論(2016)
追加のレクチャーを踏まえて、後半は参加者全員で「身近なところで変えたいルール」を出し合い、それぞれの意見についてディスカッションを行いました。
すでに取り組みに着手している人、身近な人からの相談を受けて課題を感じている人、自分自身の課題として捉えている人、さまざまな立場からの意見が集まりました。
日常の中では、なかなか話題にしにくいトピックについて話し合っていただけたのではないでしょうか。
ルールのレイヤーを見極めることが、活動の第一歩になる
ワークショップの最後に、多摩大学ルール形成戦略研究所の客員教授である福田峰之さんから、参加者のみなさんにコメントと今後の活動に対するアドバイスをいただきました。

福田峰之さん
福田「一口に『ルール』といっても、さまざまなレイヤーがあるんですよね。子どもの門限を決めること、これもルールの一つです。日本で一番大きなルールは法律で、次のレイヤーは地方自治体の条例……というように、ルールにもレイヤーがあります。
みなさんが変えたい、もしくは新しく作りたいと思っているルールがどのレイヤーにあるのか判断できないと、誰に話を持っていくべきなのか整理がつかず、ルールメイキングの運動はできません。
具体的にいうと、例えば地方自治体の条例を変えれば解決することを掲げて、国会の前でいくらデモをしても意味がないわけです。ですから、作戦がかなり重要です。まずは、目指すルールがどのレイヤーのものなのか、整理してみてください。一つずつ考えて行動してみると、みなさんが考えている活動は進んでいくと思います。
ルールに、変えられないものはありません。ただ大掛かりに変えたいのであれば、賛同者がたくさん必要なだけです。決して永遠に変わらないものはない。そう考えて行動してみれば、楽しく活動していけるのではないでしょうか」
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制作:PublicAffairsJP編集部