【インターン×社員座談会】そもそも「パブリックアフェアーズ」とは? – 前編

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「パブリックアフェアーズ」というキーワードが、業界外にも少しずつ広まりはじめている今。パブリックアフェアーズの考え方と出会い、業界に興味をもつ学生や若手ビジネスパーソンも徐々に増えています。

そこで今回は、パブリックアフェアーズ事業を展開する2社から、インターンをきっかけに業界にふれた学生・若手3人と、それぞれに異なるバックグラウンドをもつ社員3人、計6人が集まり座談会を実施。

「そもそもパブリックアフェアーズとは何か?」という、原点に立ち返る問いからはじまり、それぞれがこの業界、この仕事をどのようにとらえ、活動しているか語り合いました。

 

●協力いただいた企業
APCO Worldwide合同会社
Washington, D.C.に本社をおく、パブリックアフェアーズとコミュニケーションのコンサルティングファーム。世界30か所以上の事業所で、約800人の従業員が働いている。

 

人によって解釈の異なる「パブリックアフェアーズ」の定義

島契嗣(以下、島):今日はよろしくお願いします。インターンのみなさんからいろいろと質問してもらう前に、まず、「パブリックアフェアーズとは何か?」の認識をすり合わせたいのですが、いかがでしょう?

一般的には「社会課題を対象としたPR(Public Relations)」と定義されていることが多いようですが、業務の幅や役割については、人によって考え方が異なるのではないかなと思うんです。

城譲(以下、城):確かにそうかもしれません。私は「企業による、社会との関係構築活動」だと思っています。PRの中でも、パブリックセクターを対象としていますからね。

パブリックセクターに関する情報を噛み砕いて世の中に伝える役割と捉えると、パブリックアフェアーズ自体の理解も社会的に進むのではないかと思っています。

城 譲(たち・ゆずる)
マカイラ株式会社 執行役員

 

:なるほど。僕は「パブリックアフェアーズ」とは「2つ以上の組織体のステークホルダー間の合意形成」だと認識しています。

間に入って、認識をつくり合う役割を担っているのかなと。PRだけではなくGR(Government Relations=行政・自治体との関係構築)なども含め、それぞれの解釈があるうえ、実は同業他社との絡みもあまりない領域なので、それぞれがどう捉えているのかが気になる点ですね。

島 契嗣(しま・けいし)
マカイラ株式会社 コンサルタント

 

永井昌代(以下、永井):ちょうど先日、社内でパブリックアフェアーズに関わる勉強会を開催したのですが、そのとき「定義は、立ち位置やクライアントによって変わる」と結論付けました。

つまり定義が何であるのかは、そこまで重要な要素ではないと思うんですよね。それよりも企業と私たち、当事者同士がしっかりと対話をして、それによって「これがパブリックアフェアーズなんだ」と理解することが大事なのではないか、と。

永井 昌代(ながい・まさよ)
APCO Worldwide合同会社 マネージング・ディレクター

 

:僕はマスメディアの記者を経験してきました。記者って、現場に足を運んで、話を聞いて発信する、いわば“ミツバチ”のような役割を果たしていると思っているんですね。

そしてそれは、広義で考えれば「パブリックアフェアーズ」と呼ばれるものだとも思う。厳密に正解とされる定義があるわけではありませんが、役割や必要性などを理解し合えると良いですよね。

永井:ステークホルダーに“ガバメント(政府、行政)”が含まれていなくてもパブリックアフェアーズだとされることもあるから、面白いですよね。

例えば企業のCS(カスタマーサポート)などと対話をしているときの過程は、ガバメントを含んでいなくてもパブリックアフェアーズとなり得ます。

:確かに。その輪をどこまで広げるのかは、なかなか難しい問題ですね。

永井:経営学を学ぶ人がMBAを取るように、パブリックアフェアーズに関わる人はMPA(Master of Public Administration=公共経営修士)を取る。学問として広義的に学ばれているのも奥深いです。

ただ海外に行くと、国ごとにパブリックアフェアーズの定義は本当にバラバラでした。まさにこれから、一つの産業として確立・発展していく領域なのかもしれません。

 

学生がはじめて「パブリックアフェアーズ」に触れて知ったこと

:はじめに大人がドバっと語りすぎてしまいました(笑)。ここからは、日頃の仕事について若手のみなさんに伺っていきたいです。

実際にパブリックアフェアーズに関わってみて感じていること、驚いたことなどはありますか?

ウコンマーンアホ海(以下、海):まず、世の中には自分の知らない規制や法案などがたくさんあるのだなと知りました。そして、それらに触れることがすごく面白いです。「社会のためにこうしたら良い」とわかっていても、なかなか一筋縄ではいかないことも含めて。

ウコンマーンアホ海(うこんまーんあほ・かい)
サリー大学(英)4年生/APCO Worldwide社 インターン

 

:今、インターンとして担当している業務はどんなことですか?

:クライアントに関係する規制のモニタリング、規制に対する戦略立案、ステークホルダーマッピング、メディアリレーションズなど、多岐に渡ります。現場に出向くよりは、デスクリサーチがメインですね。

飯田萌花(以下、飯田):私は、企業のポリシーについてのリサーチを担当していることが多いです。クライアントのステークホルダーにアプローチするために、各社の想いを汲み取ることが必要なんですよね。さまざまな企業をリサーチしていますが、理念に共感できる会社ばかりなので、すごくやりがいが大きくて。

飯田 萌花(いいだ・もえか)
APCO Worldwide社 プロジェクト・アシスタント

 

:クライアントの企業理念と合わないと思うことはないんですか?

飯田:APCOではクライアントの理念や、働くメンバーの理念も重視して案件の振りわけを行なっているので、コンフリクトは今のところないですね。

奈須野文槻(以下、奈須野):僕は働いている中で「政府が出している白書がすごく面白い」ことに気がつきました。読み込めば読む込む分だけ、そこに国の現状と課題、そして将来への展望がまとまっているんです。

ただ、一般の人からみると堅い文章で書かれているので、それを修正するのが僕の主な業務です。行政の文章を紐解き、かつわかりやすく噛み砕く作業はすごく楽しいです。

奈須野 文槻(なすの・ふづき)
東京大学4年生/マカイラ社 インターン

 

:政府の白書に興味を持つ学生、すごいですね(笑)。ただ確かに、前提を知った上で白書を読み込んで資料を作ってくれるメンバーがいると、プロジェクトがスムーズに進むのも事実。だから、奈須野さんは僕たちにとってすごくありがたい存在です。

:白書のドラフトって、もともとはすごくシンプルなもの。でもそこに有識者からの声がどんどん加えられて、解読が難しくなるほどの複雑さになってしまう。

だからパブリックアフェアーズに関わる人々には、その難解な文章をわかりやすく噛み砕く力が求められているんですよね。

 

記者や営業の仕事にも、パブリックアフェアーズとの共通点がある

:先ほども少し触れましたが、パブリックアフェアーズの仕事って、僕にとっては記者時代となんら変わりないんです。記者はメディア側の立場で、パブリックアフェアーズではクライアントの目的を通じて社会を良くしたい、と同じことを思っているわけですから。

「世の中を変える」と言葉で言うのは簡単ですが、実際にはものすごく難しいこと。それを、なんとか変えるための仲介人が僕たちだと思っています。

既得権益を保ちたい人と、変化を求める人との間で、意見を交わして行動を促すのが僕ら。だからパブリックアフェアーズも、記者や営業マンと同じような仕事だと捉えています。

:営業マンと同じという話、すごく共感します。僕は以前、とある大手企業で営業部所属のインターン生として働いていたことがあるんです。

クライアントの中長期計画や思考を汲み取りながら、ステークホルダーとの関係作りを行なっていたので、仕事内容は今とそんなに変わらないなと。

:確かにそうかもしれません。自分がどんな役割を担うかは人それぞれですよね。さまざまな立場の関係者がいる中で、みんなが同じ方向を向いて歩けるようにすることが私たちの仕事なのかな、と。

そのためには仕事選びやクライアント選びも重要だと思うのですが、APCOさんとして意識していることはありますか?

永井:仕事をご一緒するうえで一番意識しているのは「納税者として、広まってほしくない、共感できないことには携わらない」ことです。

私たちがお付き合いするのはいち企業に過ぎませんが、たとえ企業であっても、国民全員のベネフィットの最大公約数を目指して仕事がしたいと思っているので。

「自分たちのサービスやプロダクトを売りたいから規制を変えたい」のような、自分本位の思いだけならば、なかなか首を縦に振ることはできません。そのサービスが、日本の社会課題の解決につながるものならばお手伝いするスタンスを常に持ち続けています。

:たしかに、どんな目的で、自分たちの働きがどれほどの影響力をもたらすものなのかは常に考えないといけないですよね。

正式に受注する前に、ステークホルダーマッピングをはじめとした、事前準備を行なって受注の必要性を考えるのは大切です。そうしないと、継続していても、やりがいや意義を感じられることがなくなってしまいます。クライアントに対しても、良い結果を残せなくなりますから。

 

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前編では、「パブリックアフェアーズの解釈」について、社員メンバーから、それぞれの経験を交えた意見が飛び交いました。次回、後編では、先輩社員たちが若手メンバーの質問に答えていきます。

>>後編に続く

(*この座談会は2019年8月に行われました)

 

●座談会参加者 プロフィール

永井 昌代(ながい・まさよ)
APCO Worldwide合同会社 マネージング・ディレクター
衆議院の議員秘書としての経験を経て、米国コロンビア大学国際公共政策大学院に入学。卒後、世界銀行、経済産業省、内閣府政府広報室、理化学研究所、静岡県などといった、国際機関、中央官庁、国内外の地方自治体の広報戦略立案や実務経験を持つ。15年以上のパブリックアフェアーズ、PR業界での経験から、パブリックアフェアーズ、アドボカシー、コーポレートコミュニケーションを専門としている。
飯田 萌花(いいだ・もえか)
APCO Worldwide社 プロジェクト・アシスタント
2018年、上智大学 国際教養学部卒。日本のメディア構造や機能の仕方について興味をもち、学生時代にAPCO Worldwide社でインターンとして働き、ガバメントリレーションズとメディアリレーションズの面白さに目覚める。卒業後、同社に新卒入社。
ウコンマーンアホ海(うこんまーんあほ・かい)
サリー大学(英)4年生/APCO Worldwide社 インターン
大学では経済学を勉強しているが、知り合いからAPCOを紹介され、インターンとして働いたことをきっかけにパブリックアフェアーズ業界にも興味を持つようになった。
城 譲(たち・ゆずる)
マカイラ株式会社 執行役員
公共セクター(国土交通省、内閣府、国際連合UN-HABITAT)での12年の勤務と国内IT企業(楽天、メルカリ)での8年の勤務経験を持つ。国土交通省では地域振興や航空政策等、内閣府では防災政策、また、国連では各国で深刻化する都市問題に対応するための調査分析を担当。楽天では法務課長、メルカリでは法務・政策企画マネージャーとして、IT分野における各種法律を運用。官民の両セクターの経験から、両者の協働による発展的な政策立案の必要性を実感し、その推進のためマカイラ株式会社に参画。
島 契嗣(しま・けいし)
マカイラ株式会社 コンサルタント
読売新聞大阪本社を経て、NHK入局。報道局社会部で警視庁、警察庁担当の記者として活動。警察庁による古物営業法改正に係るメルカリへの取材をきっかけにパブリックアフェアーズの仕事に興味をもち、2019年にマカイラへ。現在はデジタル市場や次世代メディア、スタートアップ企業の案件に従事。
奈須野 文槻(なすの・ふづき)
東京大学4年生/マカイラ社 インターン
科学技術行政に関心があり、関連する研究機関でのインターンや、NPOの立ち上げ・運営経験をもつ。産学官の連携や多様なステークホルダー同士のコミュニケーションのあり方に関心をもつ中で、パブリックアフェアーズを知る。

 

 

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構成:鈴木しの/撮影:内田麻美/編集:大島悠(ほとりび)

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