PAサミット主催談:パブリックアフェアーズの最先端を語り尽くす

PAイベント

2020年9月16日(水)17日(木)に、日本初のパブリックアフェアーズに特化したビジネスカンファレンスとなる「Public Affairs Summit 〜公共との対話でつくる、これからの経営戦略〜」(一般社団法人 パブリックアフェアーズジャパン主催)が開催されます。

今回は、代表理事の藤井宏一郎氏にサミット開催にかける思いや6つのセッションの狙いについてうかいがました。

パブリックアフェアーズの多様性の祭典

──はじめに、今回のイベントの目的を教えてください。

藤井宏一郎(以下、藤井):今回のイベントをやりたいと思った理由は、パブリックアフェアーズというのは日本ではやっぱりまだまだ発展途上な未熟な部分がある産業なので、それをアップデートすることによって日本社会の前進の貢献できると思ったからです。

「民間が公共・非営利セクターに戦略的に関与していく」という意味ではみんな共通ですが、、その中には実際は色々な方々がいろいろな思いや目的をもって活動していて、その全体像がなかなか見えにくい。また、業界内外で、そのようにつながるべき人たちがつながっていない。

ひとつ、日本で特殊だと思うのが、パブリックアフェアーズという言葉が構造改革における主に「新産業支援のための規制緩和のためのルールメイキング」という所に非常にフォーカスされているという点です。

そこで今回のイベントでは、「パブリックアフェアーズの多様性の祭典」としたいと思ったのが開催目的の一つです。

──日本のパブリックアフェアーズがイノベーションのための規制緩和にフォーカスされていると。

藤井:そもそもパブリックアフェアーズというのはルールメイキングを包含しながらルールメイキングに限られるものではないです。

この時代にパブリックアフェアーズが新産業のためのルール形成というところにフォーカスされたのは、日本が今、アベノミクスの三本の矢で3本目がどうしてもうまく機能していなくて、そこが日本中のネックになっているというのがやはり「新産業支援のための規制緩和のためのルール形成」にフォーカスされている理由なんじゃないかと思っています。

一方で「ルール形成」という言葉自体は、元々はどちらかというと国際的な文脈から始まったと思っています。日本が世界のルールメイキングや国際規格標準争いになかなか勝てない、欧米の企業は国際機関だとか国際ルールメイキングの場や国際条約交渉に技術も法律もわかる優れた民間人がコミットしているにも関わらず、日本が戦略的にできていない、というところに大きなフォーカスがあったというふうに考えています。

現に、自民党では今、「ルール形成戦略議連」がありますが、ここで議論されていることは、政府の規制改革会議が議論しているような国内の規制緩和よりも、国際的な産業ルールのグランドデザインのようなことがメインのテーマになっています。

これに加え、日本では選挙以外の方法で社会のルール形成にしたいという若手の流れ、政治への既存のアクセスルートを持たないスタートアップや新産業の動き、というようなものが全部一緒になって、パブリックアフェアーズの大きなうねりを作っているんだと思います。

しかしながらその人たちがお互いのことを知っているか、一緒に仕事をしたことがあるかというと、必ずしもそういうわけではなくて、なかなか一堂に会することがない。

外資系のロビイストや製薬会社のロビイスト、エシカルカンパニーのようなところで CSR 主にやっている人たち。それから政府のルールメイクに様々な形で関わっている専門弁護士、主に企業のレピュテーションマネジメントや CSR、パブリックアクセプタンスの分野で活動することの多い PR プロフェッショナル。

そういう人たちは、おそらく連携することによってより大きく日本の民主主義を補完することができるであろうし、世界に伍する日本の産業イノベーションを巻き起こすことが出来る。そういう人たちの相互啓発と交流のための場を作りたい、というのが今回の大きな目的のひとつです。

──今回、この六つのセッションを選んだ理由はなんでしょうか。

藤井:今回、この六つのセッションになった理由というのは、以下のように言えるでしょう。

① 【企業戦略とPA】 企業戦略とパブリックアフェアーズ

藤井:まず企業戦略のセッションですが、もともとパブリックアフェアーズという言葉自体は必ずしも営利企業に限らず、NPOなど市民セクターを主語としても使われる言葉です。ただ今回はやはり日本にとって一番経済的社会的インパクトが強い企業セクターにフォーカスしたいということがありました。

企業経営の中で MBA の授業を見ればわかりますが、会計・財務・マーケティング・人事などの各科目は教えられていますが、パブリックアフェアーズまたは非市場戦略という分野に正面から取り組んでいるビジネススクールはあまりありません。

ただ、実際は、一つの規制の有無で産業全体の成否が決まったりわけですし、 NGO や市民社会、世論との向き変え方を一つ間違えれば、生き延びれるはずの企業が潰れたりもするわけです。そういう意味でこの、ロビイングから PR・CSR・ブランディングまでにまたがるパブリックアフェアーズという領域は、企業経営の中で必ず誰かが目配りしていなくてはいけません。

それはもちろん、そのビジネスが規制産業であるか、消費者の目が集まるB2C 産業であるか、地元との関わりが生じるインフラもしくは装置型産業であるか、などによって力点は違ってきます。ただ、いずれにせよどの場合も、パブリックアフェアーズが企業戦略で重要であることに関しては変わらない。むしろ、どういうビジネスかによってどこに力点があるか、ということの議論すらきちんと整理されてないことが問題だと思っています。

よって企業経営の中にきちんとパブリックアフェアーズを続けていくこと、これが我々の一つのゴールになります。

② 【民主主義とPA】 2020-2050の政治を考える:21世紀型民主主義と企業ロビーの果たす理想的な役割

藤井:そして民主主義とパブリックアフェアーズに関するセッションです。こういうセッションを正面からどーんとできるところがこの我々の団体の面白いところかなと思います。

パブリックアフェアーズというのはその国の政治過程論、あるいは政治的意思決定システムの在り方と表裏一体な活動です。たとえば簡単な例ですと、ある政策を政府に訴えたい場合、その時の政治が官邸主導であれば官邸にロビングするわけです。

かつてのように族議員が力を持っていれば、族議員にロビングしなくてはいけない。業界団体が非常に力を持っている分野では、いかにその業界団体を味方につけるかということが問題になる。劇場型政治と言うように一般大衆の支持や浮動票が非常に大きく物を言う政治状況においては、一般人の気持ちの上での支持をどう取り付けるかということが重要になる。

つまり、2020年のパブリックアフェアーズのノウハウというのは、2020年の日本の政治的意思決定システムに最適化されている。すると2030年、2040年、2050年の政治はどうなっているのだろうという質問は、2030年、2040年、2050年のパブリックアフェアーズはどうなっているのだろうという質問と同義になる。

今、まさに政治の節目のさなかに日本はいますが、もともと、日本はオリンピックを節目に社会経済構造が変わると言われていた。そこまではアベノミクスのカンフル剤は効くけど、そこから先は、オリンピックを踏み台によほどうまくジャンプしないと無理だと。

現実は予想よりもさらに厳しく、オリンピックの代わりにコロナが来て、社会の分断が進む中、一方テクノロジーの導入は進んで、世の中どう変わるのか。政治がどう変わって、それによって政治と産業の関係、すなわちパブリックアフェアーズがどう変わるのか。この点が本セクションの核心となります。

③ 【国際戦略とPA】 国際ルールメイキング最先端

藤井:そしてやはり国際戦略について議論を深めたいと思っています。国際戦略が日本の企業にとって重要であるということは、先に申し上げたように言うまでもないことです。

ただその重要性にもかかわらず、その必要性や企業の活動実態が見えていない。これは実際の活動が日本ではなくて外国で行われる場合も多いので、なかなかその現場に行った人でないと、どういう活動が置かれているかというその実態が見えない。そこで、国際的なルール形成の中心で、世界中のロビイストが行き交うEUのブリュッセルやワシントンDCに実際にいらしたプロフェッショナルの方々にお越しいただいて、外国での現場のロビイングの活動をご紹介いただくことといたしました。

それから日本が、各国の産業とこの21世紀に伍していく中で、経済安全保障のリスクも重要性もますます高まる中で、どのようにルールを使って国として一丸になってこのルール競争国際社会を生き伸びていくか。そういうことをちゃんと議論したくてこのセッションを設定しました。

さらに国際パブリックアフェアーズ人材というのは、日本ではなかなか育たない状況です。これは言語の問題もあるし、企業の中で、もしくは産業の中にそのような国際ロビイストになるキャリアパスというものがなかなかきちんとした形で確立されていない。

政府も人材育成として手薄な部分である、というふうに考えています。そのため国際戦略とパブリックアフェアーズという領域に、こういった職業もしくはプロフェッショナリズムがある、ということを皆さんの前に明らかにして、この分野を人材面含め、日本としてどうやって強くしていくか、少しでも一緒に考えたいという風に思います 。

④ 【CSRとPA】 CSVの時代にあえて「CSR」に注目する

藤井:CSRは、「守りのパブリックアフェアーズ」と 密接に関連する問題です。「守りのパブリックアフェアーズ」とは、自社のビジネスが安全安心や環境影響で世論の批判にあったり、規制されるリスクがある時に、どうやってそれを守るか、ということです。

このような場合、単に「規制しないでください」というロビイングをしても、まったく意味がない。技術や製品の批判を浴びる部分について、世論の声を聞きながら修正していくのはもちろん、ビジネス側からも積極的に世論と対話し、誤用濫用のリスクを下げていくためにユーザーの普及啓発活動を行ったり、製品改善について情報発信をしていく必要がある。それと同時に、受け入れ可能な線での規制や業界ガイドラインの策定に向けて渉外活動を続けていくわけです。そのような活動において、CSRは非常に重要な位置を占める。

ここで CSR というのは、「企業がその活動において生み出す社会課題に対してどう責任を取っていくか」という意味での CSR です。「ビジネスの本業で社会課題を解決する」という、いわゆる CSV のことではありません。CSV 含めて CSR であるという言い方もありますが、それは分類論なので一旦脇に置きます。

企業が大きな影響を持つぐらい大きくなると色々な課題が生じます。製造業であればCO2排出など様々な環境への負荷が生じる。サプライチェーンのどこかで人権侵害が生じていないとも限らない。 ITは世界を革命的に変え世の中を格段に便利にしましたが、一方で子供や高齢者といったデジタル弱者にとっては新たな危険を生活環境に生み出しています。

このような状況を放置するとメディアや SNS で批判され最終的には規制が生じるですから、 CSR をどれだけちゃんとできるかということは、本業の生む社会への負荷を100%除去することは不可能な中で、どのようにして製品サービスがもたらす利便性がそのマイナスを上回るようにマイナスを減らせるか、そのための 変革であり普及啓発でありコミュニケーションであるわけです。

現在、「本業で社会課題解決」ということが注目されすぎてCSR のこのような重要な側面が見落とされがちです。しかしパブリックアフェアーズの実務の現場ではこのような形での CSR 活動というのは非常に多い。そしてその中で様々な産業が生み出す社会課題を解決しようとしている NGO や NPO との連携、社会的弱者が被害に遭わないようにするための普及啓発活動など、真摯で奥行の深いパブリックアフェアーズの活動現場の世界があります。

この CSR のためのパブリックアフェアーズなくして、社会的責任のあるイノベーションを語ってはいけない。そういう思いでこのセッションをセットさせていただきました。

⑤ 【世論喚起とPA】 パブリックアフェアーズ × PR/世論喚起による効果最大化

藤井:それから世論喚起に関するセッション。元々パブリックアフェアーズというのは、広い意味でのパブリックリレーションズ(メディアとの関係構築という意味での狭義のPR ではなくて、あらゆるステークホルダーと360度で関係構築をするという広義のパブリックリレーションズ)の一部であるという考え方もあります。いわゆる広報や PR の世界とは、パブリックアフェアーズは相当のクロスオーバーがあります。

対面で人に会って説得するという地上戦と、メディアや SNS、イベントやシンポジウムなどを使って広くマスに訴えかけるという空中戦のコンビネーションは、あらゆるキャンペーンにとって必要です。

ともするとパブリックアフェアーズは、ロビイングの地上戦の話ばかりになってしまいがちですが、実務にあたる者にとっては、大きなキャンペーンの半分は空中戦であるというのが実感です。

また、今後メディアが SNS に主役を取って代わられ、細かくターゲティングされたエコーチェンバーの中で政治的社会的な言論がなされていくと、民主主義は空洞化します。したがってこの問題は、空中戦にならざるを得ない現在の民主主義システムをどう味方に付けるか、ということと、その裏側にはそれでもどう民主主義を守り熟議を尊重する社会を構築できるか、という問題意識がなくてはいけません。つまり、現代民主主義体制におけるプロパガンダ論です。

そんな意識を裏側に持ちつつも、プロフェッショナルのキャンペーナーとしては、実務で空中戦を戦う必要がある。そんな現場での、最先端の事例や手法などのテクニカルな議論もできる、そんなセッションを期待しています。

⑥ 【Society5.0のガバナンスとPA】 Society 5.0に向けた統治システムのイノベーション

藤井:最後にソサエティ5.0ですが、この未来志向のセッションに関しては、私も何が落としどころになるのか、まだよくわかっていない部分があります。ただ、ポイントはいくつかある。

一つ目は、すべてがIoTでつながるデータ流通社会では、レグテックやサプテックと言った新しいテクノロジーの導入によって、政府がビジネスをリアルタイムで監視出来るなど、監視する手法が変わり得る。次に、そのようなアルゴリズム中心のハイテクビジネスは、オペレーションやスペックを事細かに法令で規定する従来型の規制では規制しきれず、ある程度産業界の自主規制に任せながらその自主規制の在り方自体を当局が監視するという、ゴールベース・アプローチやマルチステークホルダー・アプローチ(共同規制)に移らざるを得ない。三つ目は、マルチステークホルダー・アプローチがデジタル技術の力を借りることにより、立法過程の更なる開放・民主化を志向するクラウド・ローやオープン・ガバメントといった、デジタル民主主義に発展していくかもしれない。

このうちまず一つ目の、政府がビジネスを監視する手法が変わる、というのは確かに変わります。ただそれはもしかしたら法務や監査などのコンプライアンス部門の問題であって、政治行政、メディアや有識者が、あるビジネスやテクノロジーの規制の在り方を議論するという、その政策形成過程論にどのような影響があるのかは、まだよくわかりません。またそのような変化が起きるとして、どのようなタイムスパンで起きていくのかも、まだよく見えない。

一方マルチステークホルダープロセスに代表されるような政策形成過程の変化は、パブリックアフェアーズにストレートに影響があります。ただ現在ではまだ実例も少なく、それがどのような分野においてどのような形で現れるのかといった分類やベストプラクティスが実務でまだ積み上がってない気はします。ただ、未来のパブリックアフェアーズ、未来のロビイング、未来の民主主義を考えるにあたっては、避けて通れないテーマです。

そのため、この世界を一番よく知るエキスパートたちに集まって頂き、デジタル技術の発達とSociety5.0で、政策形成とパブリックアフェアーズが、どのように変わっていくのかを未来志向な議論で聞けたらと思っています。

今後の活動について

藤井:今回色々な制約のもとでこの六つのテーマを選びましたが、後二つやる余裕があったら NPO や NGO によるソーシャルセクターのパブリックアフェアーズと、地方創生を取り上げたいです。

ソーシャルセクターでは、草の根ロビーの動きやコレクティブインパクトなど、市民社会をみんなで作っていく上で必要な、さまざまな有益な議論を是非とも取り上げたい。それから地方創生は、いうまでもなくポストコロナ・ポストオリンピックの日本において最も重要なテーマの一つで、関心も高いです。自治体や地元コミュニティが主な関係者になるため、パブリックアフェアーズとしては政府や国際向けとは、別の専門性やネットワークが必要となってくる分野です。

この二つはぜひ取り上げたかったので、次回必ずやります。それ以外にも議論したいこと、みんなで新しい日本を作るために仲間づくりをしたい領域は、たくさんあります。PAサミットはこれからも継続して開催しますし、今後は定期的に勉強会や、中規模のフォーラムも開いていきます。ぜひ今後も「一般社団法人 パブリックアフェアーズジャパン」の活動にご期待ください。

 

イベント特設サイト・参加申し込み(無料)はこちら
https://pajapan.or.jp/pasummit2020/

 

──
構成・編集 PublicAffairsJP編集部

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