内閣改造は例年行事?

事例

2023年9月13日に内閣改造が行われ、大臣19名のうち13名が入れ替わりました。また、同日、自民党においても党4役(幹事長、総務会長、政調会長、選対委員長)を含む執行部の人事が行われました。

各種メディアでは、支持率の上昇が過去に比べて低い、これで選挙は遠のいた等様々なコメントが述べられています。本稿では、そのような今回の内閣改造が今後の政権に与える影響を議論をするのではなく、パブリックアフェアーズに携わる人々が知っておくべき内閣改造の知識を述べていきたいと思います。

なぜこのタイミングで内閣改造?

メディアを見ていると、今回の内閣改造は支持率が下がってきた岸田政権が政権浮揚のために行ったというような論調が見られます。もちろん、そのような理由もありますが、内閣改造及び自民党人事というのは、毎年この時期、9月前後に行われているものであり、政治関係者は何ヶ月も前からこの時期にあるということは分かっているものです。

では、なぜこの時期かということなのですが、通常国会(1月から6月)と臨時国会(慣例的に10月くらいに開催)の間にあたり人事にちょうどよい時期にあたるためです。

参考1:毎年行われる内閣改造
2018年:10月2日(第4次安倍内閣1次改造)
2019年:9月11日(第4次安倍内閣2次改造)
[2020年:9月16日(安倍総理の任期途中の総裁選を経て菅政権誕生)]
[2021年:10月4日(総裁選を経て岸田政権誕生)]
2022年:8月10日(第2次岸田内閣1次改造)
2023年:9月13日(第2次岸田内閣2次改造)

人事は内閣だけではなく、自民党全体の人事

内閣改造が行われると、メディアでは大臣の人事が注目され、大臣としての資質だったり人柄などが紹介されたりし、人によってはスキャンダルが暴かれて批判を受けたりしています。が、内閣改造のタイミングで行われる人事は大臣だけでなく、副大臣、政務官は基本的に総入れ替えとなり、さらに自民党人事全般に及びます。

自民党側では、党4役などの執行部だけでなく、各省庁ごとに置かれている部会の部会長、部会長代理、副部会長なども入れ替えが行われます。大臣になれるかどうかは実力及び運がものをいうそうですが、副大臣までは当選さえしていれば順番に回ってくると言われます。政府における副大臣、政務官、党における部会、組織運営本部、国会対策委員会など政府側、党側の色々なポジションでの仕事を経験させ、その人の特性を見極めていくためと言われます。

このような人事政策上の理由もあり、自民党では毎年9月に人事が行われることになっており、内閣改造は自民党の人事の一環とも言えるのです。

大臣だけでなく副大臣、政務官、部会長人事まで目を離さない

我々パブリックアフェアーズに携わる人間にとって、もちろん大臣は大切ですが、大臣は多忙を極めなかなかアクセスできる存在ではありません。副大臣、政務官、部会長といったポストの人たちのほうが相対的に時間を取ってもらいやすく、また、行政と近いところにいるのでパブリックアフェアーズ上重要な存在となるケースがでてきます。

副大臣・政務官人事は、通常、大臣人事が行われてから実施されますので、1日2日のズレが生じます。今回のケースでは9月13日が大臣人事で、15日が副大臣・政務官人事でした。さらに、自民党の部会長、部会長代理、副部会長などの人事は、内閣の人事から1週間ほど遅れて発表されます。

なお、今回は副大臣には当選回数で4回(衆議院の場合)の議員が最も多く、政務官は当選1回の議員が最も多く就きました。ただ、これは当選回数が多い議員から順に回ってくるので、総選挙から何回内閣改造が行われているか、同期の人数がどれくらいいるかにもよって何回生のときに副大臣、政務官が回ってくるかが変わってきます。現在の当選4回の議員は2012年の自民党が大勝した選挙で初当選した議員が多く、4回生の中で副大臣を経験している議員はまだ少ない状況です。

ちなみに、若手議員には、人事の前に調書が来て、第1希望:〇〇省、第2希望:△△省といった形での希望を党執行部に伝えます。希望通りになるとは限らないですが、直前まで大変な仕事を任されていた人などは論功行賞的に希望するポストがもらえたりすることもあるそうです。

 

参考2:大臣、副大臣、政務官の当選回数(衆議院議員のみで作成)

当選回数

大 臣 副大臣

政務官

10回

2人

9回

2人

8回

3人

7回

4人

6回

2人

5回

2人

1人

4回

17人

3回

1人 1人

2回

3人

1回

12人

 

新任の議員へは早めのアプローチで関心を高める

大臣をはじめとして新しいポストについた議員は、普段からよほどその分野を勉強している人は別にして、担当領域にそこまで詳しくないことも多々あります。とはいえ、新しいポストで成果をあげたいと思っている人々ですので、できるだけ早くアプローチして関心を持ってもらい、課題解決に取り組んでもらえる可能性を高めたいところです。

元々付き合いのある議員であればコンタクトは可能かもしれませんが、全く知らない人の場合、就任にかこつけて有象無象の人々がコンタクトしてくるなか、どうしても警戒されてしまいます。なんとかターゲットの議員の知り合いを探し、紹介してもらうなどして早めにコンタクトを取ることが重要になってきます。

大臣、副大臣、政務官、部会長には各省庁の担当部署から所管事項説明が1,2週間かけて行われますので、事務所へのアプローチとして「各省庁からも〇〇について説明があったと思われますが、〇〇についての民間側の意見についてもぜひお聞きいただきたい」といった形で話すと聞いてくれる議員もいるのではないかと思います。

 

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制作:PublicAffairsJP編集部 / 城 譲 (マカイラ株式会社 執行役員 / Makaira Public Affairs 代表)

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